愛知県常滑市を中心に生産され、日本六古窯の一つでもある常滑焼(とこなめやき)をご存知でしょうか。そんな常滑焼をSTORESで販売されているのが山源陶苑(やまげんとうえん)さんの運営するショップ「TOKONAME」です。
今回インタビューさせていただくショップオーナーさんは3代目陶主である鯉江優次(こいえゆうじ)さん。伝統を守りながら挑戦を続けていく鯉江さんの想いやこだわり、ネットショップ運営だけに止まらない活動に迫りました。
伝統を継承し、更新したい
- TOKONAMEというブランドについて教えてもらえますか?
常滑焼はこの地域で伝統的な焼き物ですが、手がける会社がこの20年で随分と減りました。理由としては職人の高齢化と、注文がなかなか入らないためにやめていかれるという2パターンですね。
私は元々作り手側ではなく販売側として勉強をしていたこともあり、常滑焼の可能性はもっとある、多くの人に楽しんでもらえるはずだと確信していました。しかし、今でこそ変わりましたが、当時は黒色や朱色といった伝統的な常滑焼の色を好む人にのみ使って貰えればいいという、伝統工芸品ならではのしがらみがあったんです。
そのため、すぐに取り掛かることはできず、知り合いのデザイナーなど6人でチームを組み、10年越しにようやくリリースできたのが、淡い色を特徴とした「TOKONAME」です。
従来使われる茶や黒といった色はどうしても強いイメージがあるので、落雁をイメージさせる淡い色にすることで、より色々な方に手に取っていただけるようにしました。
色は違えど、常滑焼の技術や素材はそのままです。経年変化して艶が出てくるのが常滑焼の特徴。昔からあるアイデンティティを損なわないようにしながら、着色や情報の発信の仕方だけを変えたんです。
常滑焼が発展したのは型を使った生産ができたからという背景もあり、型を使った生産にもこだわっています。型でつくれるよう土に淡い色を数パーセントという単位で調合し、何度も試作しましたね。フォントやグラフィックなどのデザインの部分はチームのみんなから教えてもらいました。
- 作ったものを売るだけでなく、陶芸体験ワークショップなどもやられていますよね?
はい。TOKONAME STOREのワークショップは小さなお子様も一緒に楽しむことができるので、家族の時間を楽しんでいただけます。TOKONAME STOREでは「焼き物の価値を創造しよう」をコンセプトに掲げていて、体験そのものを楽しんでもらいたいんです。
最近では小学校での陶芸体験も開催しています。自分が作ったお茶碗を使うという経験は、印象深く子供達の記憶に残り、またそれが次の世代に受け継がれていく。地元を離れても思い出すきっかけになったりしますよね。
フレンチ料理店を営む知り合いのシェフと一緒に、地域の食材を使ったフレンチを食べてもらうというイベントも行いました。常滑焼も使ってもらいたかったので、ディナープレートやデザートプレートを新しく製作、小学校でテーブルセッティング等も全て行い、イベント後はその食器を全てプレゼントしました。10年後、その子供達が成人になる頃に、また常滑焼の器を持って、地域の食材を楽しみにフレンチを食べに行ってくれたらと願っています。
ワークショップや小学校での活動は自分ができる地域への恩返し的な意味合いが強いですね。
ブランド価値を高めるためにSTORESを選んだ
- そんな中、どうしてネットショップをはじめたのでしょう?
もちろん、卸で販売する方法もありますが、私には元々、常滑焼というプロダクトが観光の1つになってほしいという強い想いがありました。だから販売は直営店、つまり実店舗のTOKONAME STOREとSTORESのネットショップだけに絞るという選択をしました。
ネットショップを使えば、遠方にお住まいの方でも購入いただけます。一度直営店で買った方がネットショップで追加購入をしてくださることもあるんですよ。
- 数あるネットショップの中でSTORESにしたのはなぜですか?
信頼しているチームメンバーから「STORESなら大丈夫だ」と薦められたからですね。実際に使ってみると、一番シンプルで分かりやすかった。
ネットショップを運営するのはSTORESが初めてではないのですが、TOKONAMEのブランド価値を高めることを考えたときにSTORESが自分たちには一番合っていると思い、お引越しをしました。
ただ、まだまだ工夫の仕方もあるでしょうし、商品を安定的に供給できるようにならなければいけないなという課題感もあります。
- ネットショップを運営する上でTOKONAMEさんならではの工夫を教えてもらえますか?
まずは梱包ですね。ギフトとしても贈れるよう、1個箱に梱包し、さらに外箱にも入れています。箱の種類もたくさん揃えていて、商品に合う箱を選んでいます。
過剰包装にならないようにしながら、自分が受け取ったときに嬉しくなるような梱包にしています。焼き物なので割れないように頑丈にしているというのもありますね。
また、SNSは物を作っている過程や工程が伝わるような投稿を心がけています。
STORESに掲載する写真は商品に焦点を当てていますが、InstagramなどのSNSには多様性があっていいと思っています。私がSNSにあげる写真は子供の笑顔など人に焦点を当てたものが多いですね。SNSやネットショップだけでなく、地域活動、実店舗、山源陶苑全てが連動するように活動することで、お客様自身が発信をしてくださることも多くなりました。
多くの人に手に取ってもらうためには自分たちのオリジナル性を大切に
- これから挑戦したいことを教えていただけますか?
学校給食を常滑焼にしたいです。先ほどもお話しましたが、お店をはじめてから地域貢献への想いが強くなったんです。常滑市は子供の人口が増えている珍しい地域なのですが、焼き物を知らない子が増えてきています。ここに住む子供達はすぐに常滑焼を買ったり作ったりできる環境にいますから、ぜひ自分たちが作ったお茶碗でご飯をいただくという体験をしてほしいと思っています。
もう一つは海外進出をさらに進めたいと考えています。初代の頃からヨーロッパには輸出をしていましたが、孫請けの会社だったこともあり、自分たちの名前はでていませんでした。自主ブランドを出して世界で評価を受けている、自分たちの名前を出せているというのは非常に楽しいです。もっと挑戦を続けていきたいですね。
- これからネットショップ販売する人がいたとして、伝えたいアドバイスがあればぜひ教えてください
インターネットは様々なもので溢れていますから、すぐに価格競争になってしまいます。なかなか厳しい部分もあると思います。
だからこそ自分の想いを形にできる環境があるのなら、他と違うものをやったほうがいいと思いますね。自分たちのブランドを大事にしながら、オリジナル性が出るものをやる方が、買う方も楽しいと思います。
- 想いやストーリーが購入者にも伝わるんですね。お時間ありがとうございました!
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写真:TOKONAME提供
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