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「自分に近いものができる。それが個人店の醍醐味」積み重ねたキャリアからできた誠光社というお店

「自分に近いものができる。それが個人店の醍醐味」積み重ねたキャリアからできた誠光社というお店


毎月10,000件のショップがお商売を始めているSTORESには、個性豊かなショップオーナー様がたくさんいらっしゃいます。

今回は、京都河原町丸太町の書店「誠光社」を営む堀部篤史さんにお話を伺いました。

キャリアがなかったら、こういう風にはならなかった

ー誠光社をはじめた理由を教えてください。

 

独立して始めたんですね、ずっと書店で働いていて、店長を務めていました。そのお店は大きくなって、有名店になって、拡大した分システマティックになってきた。本来もうちょっとコアな部分でやっていたつもりが、広がってしまったというか。そこにギャップみたいなのを感じていた。

 

独立するつもりで勤めていたわけじゃないけど、そういう思いが積もり積もったときに、キャリアもあるし、自分のお店ができるかなと思って、誠光社を始めました。

 

辞めると決めてから、どういう風にすれば自分の理想のお店に近づけられるかを考えたときに、小さくなるしかないなと。ずっと店長として経営状況を見ていて、人件費がかかるのがネックになる。本はただでさえ利幅が低いし、薄利多売ではやっていけない。お客さん層を小さくして、全部1人でやる。それなら、職住一致にして、この20坪弱のお店でイベントスペースやギャラリーもできるようにしようと。

 

誠光社 1

 

ーここがお住まいでもあるんですね。仕事とプライベートを分けるのが難しくないですか?

 

仕事が自分の生活に近づいてるんです。前のお店でギャップを感じたのも、自分とお店が離れてきたのが嫌だったんだと思うんですよ。

 

それを近づけるには、自分の好きなものだけを売るわけじゃないんだけど、お客さんと自分の中間くらいのものをセレクトして、自分が興味ないもの、自分のやりたいカルチャー関連以外のものを扱わずにやっていけてる。自分と店が近いし、生活と仕事がすごく近い。

 

ーなるほど。さっきから思ってたんですけど、ロゴが素敵ですよね。

 

誠光社 2

 

全然お金はないんだけど、ロゴもデザイナーさんにお願いしたし、内装も建築家の先生にやってもらった。本の仕入れは取次を通さず、出版社から直接買い取るので利幅をよくしてる。長年同じ本屋をやってきたから、出版社とも繋がりができて、デザイナーさんと仕事をする機会もあって、建築家の先生も京都の飲み屋に通ってるときに知り合った。

 

キャリアがあったからこういうお店ができた。キャリアがなかったらこういう風にはならなかったと思うんですよね。20年近くやってたんで、独立する時に、お店の設計ができたんだなって。

 

ーそういった繋がりから生まれたお店って京都っぽいなと感じます。

 

そうですね。コーヒーは僕の先輩でもある六曜社さんとすぐ近くのかもがわカフェから仕入れてます。自分のキャリア、繋がりから作っているわけです。

 

遠いところにいる有名な人に打診してお金払って、てなると、ビジネスの話になるんで、しんどいんですよ。お金さえあればできる。資本があるところが一番いい店作れるのかというと、そういうわけではなくて。

 

自分に関係のあるものは自分にしかできない。デザイナーさんも友達だし、建築家も飲み屋で仲良くなった人だし、コーヒーも自分の先輩で、他ではこうやって販売とかやらない人だけどやってくれて、自分に近いものができる。それが個人店の醍醐味ですね。

 

例えば資本のあるところが、こういう個人店や、ポートランドやブルックリンのお店をコピーしてきても、コピーでしかなくて。資本があればできるから、どこにでも、だれにでも同じ店ができる。

 

その人が編集したお店っていうのは、その人のキャリアが出る。そういうお店って京都に多いんですよ、みんな音楽が好きで、生活と仕事が近いから、だいたい自分の好きな音楽かけながら、ってところ多いですね。ごはん屋さんにしても、喫茶店にしても。

 

ー今もアル・グリーンがかかってますもんね。やっぱりお店はじめてよかったなって感じますか?

 

そうですね。そんなに儲かる商売ではないですし、毎日やりくりも大変ですけど。もちろん本当に厳しくなってきたら妥協しないといけない。商売はそういうものですから。

 

今は店の引っ張る力が強い、店が発信するものを買ってもらえる。でも、徐々にジリ貧になっていくと、お客さんが求めるものをお店が合わせるようになってくるんですね。パワーバランス。1人でやってるから、無理してでも、自分のやりたいことをやっていけてる。

 

誠光社 3

 

ネットショップはお店のメディア

ーネットショップはお店を開ける前から始めてますよね。(編集注:2015年8月にネットショップを開始、お店のオープンは10月)

 

準備期間中も収益をあげないといけないし、取引先は知ってるわけやから。ネットと在庫を置く場所さえあればできるわけだし。

 

ネットショップは、やっぱりメディアだと思ってるんです。本には紹介リリースがついてくるんですけど、それは使わない。全部自分の言葉で説明して、読み物みたいにしてる。だから、店のメディアでもあるし、アップする商品も雑誌を編集する感覚で選んでる。

 

お店を開ける前にネットショップを始めたのは、こういうことをやるっていう宣伝になるわけですし。

 

 

ーお店はあえて、敷居をもうけて人通りが多くないところに出店されている。でもネットショップは誰にでも開かれているから、どういう立ち位置でやられてるんだろうと思ってたんですけど、メディアなんですね。

 

店の宣伝のひとつですね。お客さん層も狭まっているから、1万人くらいのお客さんを相手にしている。ご近所の人ではなくて、誠光社を目当てに遠くから来てもらうことも考えてる。そうなると、お客さんも全国に散らばってるので、ネットショップは必要ですね。

 

ーネットショップはオープンした時から、安定した売上がありますよね。

 

長年やってきたキャリアがあったので。一応メディアでも注目してもらえてたからだと思います。

 

書籍って複製品なんで、どこで買っても同じなんですよ。お店で見てAmazonで買う人もいる。だから、ある程度ネットショップは、お店の本棚のラインナップと違って、1点ものの古書とか洋書の入手しにくいものも載せてるんだけど、そうじゃない本もアップする。単にこれはどこでも買えるから載せないじゃなくて、編集のためにバランスを見て載せている。この店そのものを表してるわけじゃないんだけど、もうひとつのお店みたいな感じですかね。

 

ーネットショップを始められた当初、他のネットショップ作成サービスもあったと思うんですが、町山さんのサイトを使われてて、STORESにしたと『IN/SECTS』Vol. 6.5 特集 いいお店のつくり方で読みました。

 

町山さんの「映画その他ムダ話」で買い物してたんです。デザインがすごくシンプルだし、商材が本とか古書とかなんで、本自体がディスプレイになるから、しつらえはシンプルでいい。買い物してて使いやすさも感じていたんで。システムも使いやすいですね。

 

持続することが価値

ー今度、誠光社をどうしていきたいですか。

 

持続することが価値、そこに重きをおいてるんで、正直、売上もこれくらいでいいんです。売上をこれ以上伸ばそうとなると、人を雇わないといけないし。ただやっぱりコンテンツは常に変わっていくし、時代も変わるし、本は常に新しいものがどんどん出るわけだから、ソフトを変えながら同じかたちで続けていきたいですね。

 

誠光社 4

 

ー最後に、これからお商売をはじめる方にアドバイスをいただけますか?

 

僕は、ビジネスに長けてるわけでもなんでもなくて。やっぱりキャリアが大事やなって思うんですよ。同じことをずっと続けて、独立したり自分で店を開くタイミングってあると思うんですよね。それは買えないもの。資本投下でできないものは、それしかないんで。

 

Amazonみたいな大企業を目指すなら別ですけど、個人店をやるんだったら、自分の身の回りのものとか重ねてきた時間が、他のお店との違いになる。商品や作れる料理だけじゃなくて、この店でいうと店を作ってくれる設計の人やロゴのデザインだったり、コーヒー豆とかね。そういうのがそこにしかない店になる。みんな行きたいのってそこにしかない店だと思うんです、個人店っていうのは。

 

どこにでもあるものは、俯瞰してみるとわかるじゃないですか。これはマニュアルで作ってるんだなって。そうじゃなくて、自分しか持ってないもの、それは最上級のものじゃなくていいと思うんですよ、そういうのがやっぱり自分だけのもの。キャリアは大事だってことですね。

 

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文・写真:STORES Magazine編集部
 
 

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