毎月10,000件のショップがお商売を始めているSTORES(ストアーズ)には、個性豊かなショップオーナー様がたくさんいらっしゃいます。
今回は、「日常に文化を」をテーマに、日本の着物や羽織物をお洋服に仕立てなおすブランドkeniamarilia(ケニアマリリア)の座波ケニアさんにお話を伺いました。
着物にはその時の美しさが込められている
ーなぜ着物を使ったアパレルブランドを始めたんでしょうか?
将来ブランドをやりたいという気持ちがあって、服飾の専門学校に入ったんですが、ファッションやモードが好きというよりも、テキスタイルが好きなんです。テキスタイルという視点で見ると着物はとても魅力的。服飾の勉強をして、アパレル業界で働いて、色んな仕事を経験しましたが、着物が好きという気持ちはずっとありました。
ー着物のどこに魅力を感じたんですか?
着物は1着1着に、その時代の背景や人の思いがあって、さらに職人さんの技術が込められている。技術的にも時代的にも、その時のとても美しいものが織られている、そんな美しい文化はないと思うんですよね。大量生産された着物でも、時代背景や思いは文様に表れます。それを小さい子どもから大人になるまでずっと着られるように仕立てられる。こんなに美しいものはないと思って。
えっさほいさ✨えっさほいさ✨
— 座波ケニア 🇧🇷@和服のデザイナー (@kekekeity) 2020年1月8日
全部全部本当に素敵ってそれしか言ってないんですが。どう素敵かって30年前のものと思えない色、艶、手触り色あせもなく凛とした素材。毎日毎日着てたら気持ち良いだろうなあ。#keniamarilia#keniamarilia第5弾 pic.twitter.com/ckR0IjqNZa
ーたしかに…そんな視点で着物を見たことなかったです。
忘れがちですよね。
keniamariliaを始めたのは、そういった日本の素晴らしい文化を日常の延長線上に復活させたいという思いからです。着物として日常生活に取り入れるのは難しいというのは重々承知しているんですが、自国の文化に触れることで自尊心もあがるし、自己肯定にもつながると思います。
ー着物はどういう基準で選んでいるんですか?
デッドストックやヴィンテージや現代着物様々なものを仕入れています。どんな着物でもいいわけではなくて、着物の文脈を尊重して、小紋というカジュアルに着られる種類の着物を使うようにしています。振り袖でもいいかもしれないけど、振り袖は晴レノ日に着るものですよね。それは文脈を無視している部分があるので、文化に敬意を払う意味も込めて、文脈に沿ったものを日常着にしています。
着物の文脈を壊さずに、日常に取り入れる
ーkeniamariliaは2019年10月〜販売を始めましたよね。実際に、ブランドを始めてみてどうですか?
始めてよかったです!でも、始めるまでの準備期間はかなりかかりましたね。試作は数年前から始めていたんですが、初めて「ブランドを始めたい」と言ったのは2019年2月。やっと口にしました。
ーブランドの構想を始めたのはいつなんですか?
ブランドをやりたいという思いは中学生の頃からあって、そのためにはどうしたらいいのかを考え、商業高校で流通経済や簿記を勉強しました。専門学校に行くためのお金を稼ぐために2年働いて、2年制の服飾学校に入学して。それでも、まだブランドを始めるための武器は足りないと思い、アパレル業界に就職して、営業、企画、生産管理をやりました。
会社にいて、会社のお金でブランドを立ち上げることも考えたのですが、生産都合上コンスタントに商品が作れないというのがわかっていたので、自分でやるしかないと思い、会社を辞めて、keniamariliaの立ち上げ準備を始めました。
ーブランドをやるぞと決めてから一番苦労した部分はどこですか?
製品化にもっていくまでが大変でしたね。
反物は巾34cmしかないので、普通の洋服と同じパターンでは作れません。keniamariliaでは家で洗濯できるように防縮加工をしているので、着物を一度すべてばらして、糸をといてと工程が多いんですよね。その工程にいきつくまで、私じゃない人でも作れるように仕組み化するのは大変でした。
着物の文脈を壊したくなかったので、繋ぎ合わせて切るみたいなこともしたくなくて。keniamariliaのスカートになっても、着物を着ているような感覚になってほしいので、スカートの巻き方も左前になるようにして、ウエスト部分も着物にはないのでゴムやファスナーは使っていません。
結果的にそうなったのですが、そうなるまでにはたくさん失敗をしました。洗剤につけたら染色が溶けてしまったり、古くて耐久性がない生地は裂けてしまったり。お金も時間もかかりましたけど、その失敗期間は必要でしたね。
ー着物でできているので、家で洗濯できないと思っていました!
着物を日常で着るためには、クローゼットにあるお洋服と同じくらい扱いやすくないといけないと思いました。他のスカートと同じように着れて洗えないと。クリーニングに持っていかないといけない服は1度クリーニングに出したら、ちょっと面倒で着なくなってしまいがち。それはkeniamariliaのテーマからずれてしまうので。
ー細部にまでこだわりを感じます。着物1種類から何着制作しているんですか?
1種類につき1着ですね。着物って一期一会のものだと思っているので、1種類から2着以上作ることは今のところ考えていません。
ーこだわりを感じます。着物によって厚みや素材も違いますよね。
時代によっても違いますし、もちろん経年で状態の変化はありますが、正絹だったり化繊だったり時代背景で素材も変わりますし、織り方でも変わる。透けていたり、織りの密度が高かったりゆるかったり、多種多様ですね。着物という型は一緒なんですが、ヴィンテージは物によっては短尺で丈も袖も少し短いので、スカートにした時にゆるやかなギャザーになったり。
ー扱うのが難しい生地で、1着ずつ制作して、大変ですね。それだけの工数をかけても採算はあうんですか?
それだけ手間をかけてやる価値はあると思っています。採算はなんとか、生産管理をしてきた経験が活きてます。私も自立しないといけないし、工場にも還元したいので、そこは外せません。
Twitterで友だちをつくる
会社で生産管理という仕事をしている時に、ブランドが生まれては消えていくのを何度も見ました。知られていなくて、消えていってしまう。商品がよくても知られてなければ、存在していないに等しいんだなと思いました。
自分の言葉が知らない人に伝わる環境がないうちにブランドを始めても消えてしまう。そこで、自分の言葉が私の知らない第三者に届く環境を整えようと、1年半くらい前からちゃんとTwitterでの発信をしようと思いました。
ー1年半前は、どれくらいのフォロワー数だったんですか?
400人くらいですね。
ブランドを始めた時に「がんばってね」と応援してくれる友だち、仲間がほしくて、Twitter上でもコミュニケーションするけど、実際に会わせてもらってたくさん話して聞いて。それを繰り返していくうちに、WEBメディアでインタビューをしてもらったり、生産管理の文脈でイベントで登壇したりと、色んな人の目に留まる機会が増えました。フォロワー数は全然気にしてなくて、ただ友達をたくさんつくりたくて、私を知って応援してくれたらめっちゃうれしいという気持ちでした。
おかげさまで、keniamariliaを始めることを告知した時には、本当にたくさんの方が応援してくださり、おかげ様でTwitterで日本と東京の2冠トレンド入りして。その日はお祭りみたいでしたね。でももう逃げられない、やるしかないと頭を抱えながら準備したのがこの半年でした。
ー販売を開始した時ってどんな感じでした?
超覚えてます。ストアの公開ボタンを押すのがとても怖くて。友だちから大丈夫だよ!と言われたりしましたが、試着もしないで1着3万円のスカートが売れるのか?と、商品に自信はありましたがすごく不安でした。販売している立場なのに。
公開しなきゃという気持ちと、怖い、どうしよう、という気持ちが同時に押し寄せて、えいやーーーー!と公開しました。公開して数分後から売れはじめて、数時間後にはほぼ完売で。泣きました。
皆さまありがとうござます。
— keniamarilia (@Keniamarilia2) 2019年10月30日
開始4時間で全て完売いたしました!!!!ありがとうござます!!!早急に第2弾生産進めますので今しばらくお待ちください!!! https://t.co/3g56XWN0X4
第4弾まで販売したんですが、まだ販売開始には慣れないです。毎回とても緊張します。実際に販売してみたら、友だちや知り合いだけじゃなく、まったく知らない方からも買っていただけて、嬉しいですね。
ー応援してくれる人をつくる、が実った瞬間ですね!なぜネットショップにSTORESを選んでいただけたのでしょうか?
STORESは、キャッシュフローがスムーズに感じました。申請せずとも振り込んでもらえるし、最悪スピードキャッシュもある。アパレルはキャッシュフローが大事で、1着ができあがるまでに工数がかかっていて、その工数ごとにキャッシュが必要になります。ブランドを運営していくために、お金の流れがスムーズな方がいいなと思って、STORESにしました。
ーありがとうございます。最後に、これからkeniamariliaが目指していることを教えていただけますか?
keniamariliaのテーマは「日常に文化を」なんですよ。keniamariliaきっかけで、着物を好きになったとか文化を考えるきっかけになったと言ってもらえたら嬉し泣きしちゃいますね。
着物を今の生活様式や時代にあわせた形に仕立て直して、そういった着物の取り入れ方もあるよねという新しいスタンダードを構築することで、着物業界の底上げを目指したいと思います。
写真:出川光
商品写真:keniamarilia提供
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