毎月10,000件のショップがお商売を始めているSTORESには、個性豊かなショップオーナー様がたくさんいらっしゃいます。
今回は、販売開始後数分で完売する日本酒「鷹ノ目(ホークアイ)」を手掛ける日本酒ベンチャー株式会社Forbul代表の平野さん、ショップ運営責任者の永金さんに鷹ノ目が生まれた背景やクチコミを生むための工夫について教えていただきました。
ネット限定にすることでお客様に届くまでの品質をコントロール
ー鷹ノ目(ホークアイ)を始めたきっかけを教えてください。
平野さん:僕自身がアメリカに留学し、留学したことで日本のことを客観的に見られるようになりました。海外に行ったことで日本独自の文化の魅力に気付き、それを届けていくことが未来に繋がるのではないかと考えました。
帰国後、日本の文化を発信するような会社を作りたいと思い、色んなことを経験している中で、ある時に日本酒専門の居酒屋で日本酒の美味しさを知りました。こんなに美味しいのに世界にその魅力が伝わっていないことに違和感を感じ、日本酒の勉強を始めました。
日本酒について勉強する中で、業界には価格、流通、評価軸の課題があることに気付きました。この課題が日本酒の発展を妨げているんじゃないかと思い、その課題を解決するために創業200年の老舗酒蔵はつもみぢ(山口)さんと「うまさ」のみを追求したラグジュアリーな日本酒「鷹ノ目」を開発しました。
ー流通、評価軸の課題とはどういうことなのでしょうか?
平野さん:日本酒の評価軸は精米歩合の数値によってほぼ価値が決められています。精米歩合が低いほど価格が高くなる傾向があるのですが、米を磨けば磨くほど味が均質化してしまいます。それだと僕たちが求める「うまさ」の追求には繋がりません。精米歩合にとらわれず、そのままの味わいを楽しんでいただきたいと思い、鷹ノ目では精米歩合は非公開情報としています。
流通に関しては、既存の流通だと酒蔵→酒屋→飲食店の流れでお客様に届きますが、高品質なお酒ほど温度と紫外線によって劣化しやすい。僕たちが作っている火入れをしていない、無濾過生原酒はその流通網に乗せるとお客様に届くまでの品質をコントロールできないため、ネットでの直接販売を選びました。小売業全般でD2Cという流れがあるかと思いますが、それを日本酒でも取り入れようと思いました。
ー既存の流通に乗せないことによる怖さはありませんでしたか?
平野さん:既存の流通に乗せないことはチャレンジな部分でしたが、お客様に受け入れられてもらえたので問題はありませんでした。また、この価格帯で流通に乗せると、お客様への提供価格がさらに上がってしまうため、小売店や飲食店で受け入れられたかどうかはわからない部分ではあります。
結果的に、ネット限定での直販にしてよかったと思っています。
販売開始時のスタートダッシュをつくる
ー初回の販売開始時から現在も、販売開始直後に売り切れることが続いていますが、販売開始までにどのようにして認知を集めたのでしょうか?
平野さん:販売開始直後のスタートダッシュが重要だと思っていたので、信用力を高めることに注力していました。SNSでの発信を続けること、日本酒業界での人脈を作ること、そして販売開始時にはプレスリリースを配信してPRをしました。
商品設計時から、革新的な日本酒をつくろうと商品開発をしていたので、反響が出ることは予測していました。その反響が最大化するようにPRもあわせて実施したという感じです。
ー商品設計時からそのように考えられていたんですね。
平野さん:現在の鷹ノ目を発売する前に、クラウドファンディングで別の日本酒を作っていた時期がありました。日本酒に関連するイベントを主催して飲んでいただいたり、自分で飲食店への営業をしていたのですが、受け入れてもらえず、もっと革新的な日本酒をつくらないといけないと思ったんです。
実は、会社としては何度も事業を始めては失敗をしています。日本酒に特化はしているのですが、日本酒専門メディアを立ち上げたり、サブスクリプションモデルで日本酒を販売したり、居酒屋をやったり。最初の2年は紆余曲折しながら、何をすれば事業として成り立つのかを頑張り続けている状況でした。
何度も事業をアップデートしながら、市場のニーズや自身の得意や好きでやり続けられることかがわかってきましたし、日本酒関係の知り合いが増えたり、日本酒に関する知識やビジネスの知識が身につきました。
ー最初から成功されていたわけではなかったんですね。失敗もある中で事業をやり続けるモチベーションはどこから湧いてきたのでしょうか?
平野さん:これをやり続けていれば成功するという確信は創業時からあって、むしろ早くに成功するのはよくないと思っていました。うまくいかない時ほど色んなことを学び続けられたので、その期間が会社の基礎をつくったと思います。
また、日本酒の価値が十分に伝わっていないと感じていました。魅力があるのにそれが伝わっていないということは、そこにビジネスチャンスがある。いいお酒をつくって、適切な人に届けることができて、日本酒の魅力が伝われば事業としてもうまくいくと思っています。
つい言いたくなるような体験を届ける
ー認知を広げるためにどういったことを工夫されていますか?
永金さん:一番大事にしているのはクチコミです。広告で商品を買うことはなくなっていくと思っています。広告はつくられたブランドのイメージ、世界観を表現できますが、信頼できるのは友人知人のクチコミだと思います。
私たちは商品を通じて「日本酒ってこんなに美味しいものなんだ」と感動してもらうことで、オンライン・オフライン問わず、友人につい言いたくなるような体験を目指しています。ネット限定なのでお客様と直接会うことはできませんが、お客様目線に立った、感動する体験をお届けできるように気をつけています。
ークチコミが生まれるためにどのようなことをされているのでしょうか?
永金さん:SNSで「飲んだよ!」という投稿をしてもらえるように、鷹ノ目のInstagramではお手本となるような写真を投稿をしています。また、お客様に投稿していただいた際には、コメントでお礼を送ったり、ストーリーズにアップして紹介したりと、密なコミュニケーションを心がけています。
ーSNSの運用で気をつけていることはありますか?
永金さん:こんな方に飲んでもらいたいというアイディールパーソンを設定していて、その方が見たいと思っていただけるような投稿をしています。ストーリーを伝える場として活用していこうと考えています。
平野さん:まだSNSの運用は模索中なのですが、SNSで発信されている方はたくさんいらっしゃるので、インフルエンサーの方にギフティングをしたり、お客様に投稿してもらうことで集客に繋げています。
いとみゆさんが、ホークアイを飲みながらライブ配信中です😋
— 鷹ノ目 ホークアイ (@hawkeye_sake) 2020年4月5日
今ちょうど晩酌されてる方はぜひ🍶https://t.co/wGLeywIjYb pic.twitter.com/PymFrbp7dU
ーLINE@も活用されていますが、なぜ始められたのでしょうか?
毎週水曜日21:00〜、ホークアイ販売中です🍶
— 鷹ノ目 ホークアイ (@hawkeye_sake) 2019年11月18日
ホークアイはお肉との相性が抜群です。
ぜひお好きなお肉とペアリングしてみてください🥩
販売開始のお知らせはLINE@から配信しています。
友だち追加はこちらから▽https://t.co/YTcSF8dGw0 pic.twitter.com/t5n5y9vZN4
永金さん:毎週水曜日の夜9時に販売しているのですが、水曜日は忘れやすいというお声をお客様からいただき、LINE@を始めました。販売開始15分前にLINEで告知をするようにしています。現在5,800名以上にご登録いただいていて、登録いただいた方限定でお知らせも配信しています。
ー週に1度、水曜日の夜に販売しているのは、何か理由があるのでしょうか?
平野さん:発送業務の効率化と、お客様の体験を考えて水曜日の夜にしています。鷹ノ目のお客様は30〜40代の男性が多いのですが、水曜日に販売し、木曜日に発送すると金曜日か土曜日の週末に届きます。
週末に届くことで、今まで日本酒を飲んだことがない奥様やご友人と一緒に飲んでいただける機会に繋がると考えています。商品を通して「こんな美味しい日本酒があるんだ」と今まで感じていた日本酒のイメージを変える驚きの体験をしていただきたい。そんな方を増やすためにも、水曜日の夜に販売し、週末にお届けするのがベストだと考えています。
日本酒を世界に広げたい
ー数あるネットショップ作成サービスの中でSTORESを選ばれたのはなぜですか?
平野さん:事業を始めた頃は資金がなかったので、初期費用が安いことは必須条件でした。かつ、売上が拡大しても手数料が低いままランニングコストを抑えられることを考えて、STORESにしました。
売上拡大にあわせて別のECサービスに変更する方もいるかと思いますが、僕たちは機能性の高さを気に入っていて、使いやすいと感じています。
資金はないが何か販売したいという方にもすごくいいですし、ある程度の売上があがっていても最適なサービスだと思います。
ーありがとうございます!
最後に、今後チャレンジしたいことを教えてください。
平野さん:海外に日本酒の魅力を伝えたいという思いで創業したので、最終的には海外での売上比率を9割にしたいと考えています。日本での基盤はできてきたので、香港のミシュランガイドに掲載されているレストランなど現在色んな国からいただいている問い合わせに対して、対応する準備をしています。
海外の飲食店では、日本酒は値段が安すぎて仕入れられないと言われています。ワインは数千円〜数百万円まで、さまざまな価格帯の商品があるのに対し、日本酒で数万円の商品はほとんどありません。一部の国では、高いもの=品質のいいものという認識があるので、高品質で、価格も高い日本酒をつくることで、高級飲食店でも日本酒を飲んでもらえるようにしたい。高級なお酒=ワインしかなかった世界に日本酒が入ることで、日本酒の視野を広げていきたいと思います。
写真:株式会社Forbul提供