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「着る人が思ったように、感じたように、着てほしい」身につける人の歴史とともにありたい - iCONOLOGY -

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毎月10,000件のショップがお商売を始めているSTORESには、個性豊かなショップオーナー様がたくさんいらっしゃいます。

 

Twitterで見かけた刺繍のお洋服、凛とした印象で素敵だなぁと思ったらSTORESのオーナーさんでした。 調べてみると、刺繍の工房「ユタカ工房」3代目の加藤千尋さんが2019年5月に始めたiCONOLOGY(イコノロジー)というブランド。

 

刺繍工房のブランド?3代目でブランド立ち上げ?色々と気になったので、加藤さんに直接お話を伺うことにしました。これからブランドを立ち上げたい方、家業を継がれている方の参考になるかと思いますので、ぜひご覧ください。

始まりは危機感

ーなぜiCONOLOGYを始めたのでしょうか?

 

危機感ですね。刺繍工房としてこのままだと収入が一向に安定せず、職人として継いだところでいずれやってくる機械の寿命とともに廃業してしまうだろう。もう1本収入の柱がないと、いざという時に必要なところにお金を回すことができないし、機械がずっと使えたとしても、下請けの仕事だけでやっていくのは厳しいと感じていました。

 

収入のもう一つの柱を考えたときに、新規顧客獲得のために営業に力を入れるという手段もあったのですが、工房がブランドを立ち上げてどこまでやれるのかチャレンジしてみたい気持ちもありました。まずは試しにやってみようとクラウドファンディングで始めて、これでもし世間に認めてもらえたら、この挑戦を続けていこうと思いました。

 

 

ー工房はいつ継がれたのでしょうか?

 

大学を卒業してすぐです。大学院に進学することを考えていたのですが、戻ってきてほしいと言われて跡を継ぐことになりました。

 

戻ってきてからしばらくは工房の仕事をしていたのですが、3年目でブランドを立ち上げようと準備をはじめました。ギリギリの資金で回していたので、生産にまとまったお金を使うことができず、生地を調達しては刺繍を入れてと少しずつしか進められませんでした。立ち上げるまでに半年くらい時間がかかりましたね。

 

ー服作りの経験がない中で、どうやって進められたのでしょうか?

 

知り合いに縫製関係者やアパレル関係者がいたので、試作を作っては意見を聞きに行ってみたり、体当たりで学びました。何が必要かわからない状況で、パターンって?ラベルは?ネームは?みたいなことを、色んな方に聞きながら進めていきました。

 

ーその状況から半年で形にして、クラウドファンディングを始められたんですね。

 

クラウドファンディングを始める前にSNSで刺繍をしているところをアップしていました。そこで反応がなかったらクラウドファンディング自体もやっていなかったかもしれません。

 

ブランドを始めることを投稿するとかなりの反響があったので、ほしいと思ってくれる人がわずかでもいるのかもしれない、ちょっとした希望のようなものを抱えながらスタートしました。 

服が纏う空気感を伝える

ーiCONOLOGYの服は岐阜で作られているんですよね。

 

岐阜はアパレルの一大産地で、国内生産が主流だった頃は繊維業が主力産業でした。服を作るのに必要な業者がすべて揃っています。

 

岐阜出身だからここで作ろうというわけではなくて、岐阜で作るのが一番最適だったんです。工場さんも周辺に集まっているので、行ってすぐに確認できたり、プレスされた服もきれいな状態で納品してもらえるので、再度プレスする必要がありません。集まっているが故に便利なんです。

 

ー商品で一番こだわられているのは刺繍の部分ですか?

 

そうですね。刺繍工場の人間が作るならばまず刺繍に圧倒的な魅力がないといけない。お客様にとって、SNSが私の刺繍に触れる最初の機会なので、写真で見たときに思わず拡大してまじまじと見てしまうような細部まで美しい刺繍を打つことを意識しています。

 

ただ、それが服になったときに着たいと思うかはまた別の話なので、服に対する刺繍のバランスにも気をつけます。刺繍はただでさえ主張がつよいので、服の形はなるべくシンプルにして、着るのに気合のいる舞台衣装にならないように、力を抜くことを常に意識しています。

 

ー量産できるかどうか気をつけているというのも拝見しました。

 

 

刺繍のクオリティを頑張りすぎないことですね。職人なので、持てる技術全てを詰め込んで難易度の高い加工をしたい気持ちもあるのですが、例えば14色使って素晴らしい芸術作品ができたとしても、手間がかかりすぎるので量産には向いていません。

 

今のiCONOLOGYは、より多くの方に、高すぎないお値段で、刺繍を纏う喜びを伝えたいと考えています。なので、量産する時にも、スムーズに、効率よく美しく仕上がることを意識して、色数をあえて絞った上で美しく表現する方法を常に考えています。7月に販売した紫陽花や芍薬もそれぞれ5色の糸なので、色数は少ない方です。その少ない色でいかに美しく表現するかの勝負です。

 

 

iCONOLOGYでは刺繍を「図像」と捉えており、最初は一つ一つの刺繍に明確なメッセージを載せて「こんな人のイメージ」など伝えていました。ですが、モチーフに対しての想いや捉え方は人それぞれです。

 

例えば薔薇を見たときに、「好きな人にもらった思い出の花だ」とか「美しいけど美しいだけではない、私のなりたい女性のイメージ」など、みんな違った印象や想いを抱くと思うんです。なので、一人ひとり違った受け取り方をしていただいても良いように、今は私からモチーフに対してメッセージを乗せることはしていません。花言葉をさりげなく記載するくらいです。着てくださる方が、思ったように、感じたように着てもらいたいし、それは自由でいいかなと思っています。

 

ーそういった思いやこだわりを伝えるために工夫されていることはありますか?

 

特に頑張っているのはTwitterでの発信です。ですが、技術の凄さであるとか、何がどれくらい大変であるとか、業界の厳しさなどをこまかに伝えすぎず、iCONOLOGYが纏う空気のようなものがほのかに伝わるくらいでいいと思っています。

 

ブランドの始まりはお話したように危機感で、クラウドファンディングページでも一番最後に刺繍工場の下請けの現状のようなことを書いたのですが、「可哀想だから買ってあげよう」となるのは嫌だなと思いました。

 

「これを着たい」と思って買っていただけるのが、私にとっても一番気持ちがいいし、ブランドを作ってよかったなと思えるので、刺繍に対する姿勢や、服自体が纏っている空気感、岐阜の工場さんと一緒にがんばって、ていねいに届けていますよというのを伝えられたらなと思っています。

iCONOLOGYが刺繍工房の営業をしてくれる

ーiCONOLOGYを始めてよかったと思うことは何ですか?

 

まず、経済面で余裕が生まれました。今まで刺繍工房としては受け身の体制でいたところから、自分で商品を作って売ることで、収益をコントロールできるようになりました。

 

また、自分自身が刺繍のことしか知らなかったことに気付きました。これまではどういう流れで服ができてお客様に届くのかを知らずに、刺繍の仕事だけをしていました。アパレルは水平分業制をとっているので、そういうものではありますが、知らないが故に一部盲目的にどこかを批判したくなる気持ちがありました。

 

でも、服作りの最初から最後までをやってみると、川上から川下までそれぞれ苦労をしている部分があるとわかりました。刺繍工房として仕事をする上で、他の業種の視点を得ることができ、取引する時にも相手の立場から配慮できるようになりました。

 

ーお客様から直接フィードバックがあるのも違いですよね。

 

それは本当に大きいですね。嬉しいことである反面、すごく責任が伴うことなんだと感じています。刺繍を打つ時に、これがそのままお客さんに届くんだというのをとても感じます。iCONOLOGYの商品だけではなく、自分が手掛けているすべての商品がどこかにフィードバックされているんだと思うようになり、いい意味での意識改革がありました。

 

 

ーiCONOLOGYを始めたことで刺繍の依頼も増えましたか?

 

増えましたね。こういうことができる刺繍工房があるんだということで、Twitterを見て刺繍をお願いしたいと思いましたという方が増えました。iCONOLOGYが営業をしてくれていて、こういうことができるというサンプルになっています。あの花みたいな盛り上がり方でこういう図案はできますか?と依頼をいただくことがありますね。

 

ーそれは理想的なファクトリーブランドの在り方だと思います。オンラインショップを立ち上げる際にSTORESを選ばれた理由を教えていただけますか?

 

予約販売機能を使うことで、受注生産ができることですね。在庫販売ができる規模ではなかったことと、刺繍を入れる工程があるので、生産にも時間がかかります。それに対応できるかどうかが一番の決め手でした。

 

また、キャッシュフローの良さとスピードキャッシュというオプションがあることもいいなと思いました。

 

ーありがとうございます。最後に、今後挑戦したいことを教えてください。

 

私が当初想定していた目標は、工房として収益のひとつとなるは柱を得ることでした。それが達成されたので、次の目標を探さないといけないと思っています。

 

今はまだ構想段階ですが、自分の工房にはない技術を持つ刺繍工房や生地屋と一緒に取組海をできないかと考えています。周りを見渡すと、後継者がいないことがほとんどなんです。後継者がいないからと廃業されるのは、技術が消えていくことなのでもったいない。自分だけが生き残ればいいわけではなくて、業界が長く続くためにもなるべく今生き残っている素晴らしい工場には続けてほしいので、他の工場が持っている魅力的な技術や素材を活かして、iCONOLOGYらしいアレンジの別ラインを作りたいと思っています。責任も伴うので時間をかけて進めていきたいですね。

iconology-store.com

 

文:STORES Magazine編集部
写真:iCONOLOGY 提供
 
 

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