2014年6月から適切なルールの下、一般医薬品のすべてがネット販売可能になりました。この制度改正によって、アマゾンやヨドバシカメラ、セブン&アイ・ホールディングスグループといった大手量販店が、医薬品のインターネット通販に続々と参入しています。
しかし、医薬品をネットで販売するには、法律で定められたさまざまな条件をクリアしないといけません。また、無事ネットショップをオープンできても、医薬品を販売するために守らなければならないルールもたくさんあります。
この記事では、医薬品のネット販売をするうえで必要な資格や条件、ルールを解説します。
「ちょっとくらいの違反なら大丈夫だろう」と油断していると、大事なお客様の健康や生命に重大な影響をおよぼす可能性もでてきます。したがって、長くネットショップを続けていくためにも、ルールをしっかり守って運営していくことが重要です。
※医薬品販売に関するルールは非常に繊細です。ネットショップで医薬品販売を検討している方は、この記事だけではなく厚生労働省のホームページで、最新情報を必ずチェックしてください。
医薬品をネットで販売するときに必要な資格とは
ネットショップで医薬品販売を行うときに必要な資格は、薬剤師もしくは登録販売者のいずれかです。この2つについて、詳しく解説していきます。
薬剤師
薬剤師とは、薬剤師の国家試験に合格した人のことです。薬剤師が働く場所は、主に薬局・ドラッグストア・病院・製薬会社などになります。
薬局内で働く薬剤師は、医師の処方せんに基づいた薬の調剤や服薬指導、そのほかの医薬品販売・管理をおこないます。
ドラッグストアの場合は、処方せんなしで購入できる医薬品の販売・管理、相談業務などに従事します。
そして病院では、調剤や入院患者への服薬指導、医師への医薬品に関する情報提供などをしています。
なかには、製薬会社のMRとして、医師への医薬品販売や情報提供をおこなう薬剤師もいます。
登録販売者
登録販売者とは、医師の処方せんが不要な一般用医薬品の販売をおこなうための専門資格です。薬剤師と同様に、医薬品に関する専門知識を活用して、お客さまへの情報提供や相談対応などをおこないます。
登録販売者には、薬局やドラッグストア、介護の現場、製薬会社といった、活躍できるフィールドが多数あります。ですから、登録販売者が働く環境によっては、薬剤師に近い役割が求められることも多いです。
薬剤師と登録販売者の違いとは
薬局・薬店などで働く薬剤師と登録販売者の基本的な役割は、どちらも患者さんの相談に乗り、患者さんの症状や体質に合った医薬品を販売することです。
ただし、薬剤師が医師の処方せんが必要な処方薬と一般用医薬品の両方を販売できるのに対して、登録販売者の場合は、一般用医薬品のうち第二類・第三類のみの販売に限定されています。したがって、薬局・薬店で働く登録販売者は、お客様に第一類医薬品を売ることができません。
また、調剤ができるのは、薬剤師のみとなります。
医薬品をネットで販売するときに必要な条件
医薬品のネット販売をするには、以下の条件をクリアする必要があります。
実店舗がある
医薬品をネットで販売する場合も、薬局や店舗販売業の許可を受けている実店舗(有形店舗)が必要です。実店舗には、構造などの部分で以下のような法律の基準を満たすことが求められます。
・60ルクス以上の明るさがある
・十分な換気
・清潔さがある
・居住空間と隔離されている
・情報提供カウンターがある
・購入者の見やすい場所に標識がある
・購入者が容易に出入りできる構造である
・週30時間以上を目安に実店舗を開店している など
実店舗の構造がこれらの条件を満たしていない場合、薬剤師や登録販売者が在籍していても、医薬品の販売ができなくなってしまいます。ですから、医薬品のネット販売を始めるときには、法律の基準をクリアできるように、慎重な準備を進める必要があります。
薬剤師や登録販売者が常駐していて、対面や電話で相談できる体制がある
医薬品のネット販売を始めるときには、お客さまからの問い合わせや相談対応をするために、薬剤師や登録販売者を実店舗に常駐させなければなりません。また、ホームページには、問い合わせの窓口となる店舗の電話番号やメールアドレスはもちろんのこと、薬剤師・登録販売者の氏名や勤務シフトも記載する必要があります。そして、営業時間外にも対応する目的で、緊急連絡先を明記しておくことも大切です。
薬剤師や登録販売者が常駐していて、対面や電話で相談できる体制がある
お客さまからメールや電話で問い合わせや相談があったときに、すぐに対応できるよう、薬剤師や登録販売者が実店舗に常駐していなければいけません。そのために、店舗の電話番号やメールアドレスはもちろん、薬剤師・登録販売者の氏名や勤務シフトも記載する必要があります。また、営業時間外にも対応できるよう、緊急連絡先を明記しておくのも忘れないようにしましょう。
ネットショップでの電話やメールといった具体的な問い合わせ対応については、『間違えてない?ネットショップ運営で効果的なお問い合わせ対応方法』に詳しく書かれていますので、こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
ネットショップで販売できる医薬品は一般用医薬品のみ
ネット販売できる医薬品は、医師の処方せんの不要な一般用医薬品(OTC医薬品)のみです。一般用医薬品は、リスクの違いによって3つに分類されています。
分類 | 説明 | 例 |
第1類医薬品 | 副作用などのリスクが特に高い医薬品。薬剤師による確認と情報提供の義務がある。 | H2ブロッカー含有薬、一部の毛髪薬、禁煙補助薬など |
第2類医薬品 | まれに健康被害が生じる可能性のある、比較的リスクの高い医薬品。薬剤師の確認や情報提供は努力義務。 | かぜ薬、解熱鎮痛薬、胃腸鎮痛薬など |
第3類医薬品 | リスクが比較的低い医薬品。薬剤師の確認や情報提供は努力義務。 | ビタミン剤、整腸薬、一部の鎮痛消炎剤など |
ただし、処方せんが必要な医療用医薬品(処方薬)は、たとえ薬剤師がいてもネット販売できません。一方で、育毛剤や栄養ドリンク、制汗剤などの医薬部外品や、サプリメントなどの食品は、一般医薬品に含まれないため、薬剤師や登録販売者以外のスタッフでも販売可能となります。
ネットショップで販売する医薬品は実店舗でも貯蔵・販売している
医薬品は、ネットショップだけで貯蔵・販売すればいいわけではありません。法律では、実店舗でも同じものが貯蔵されていて、なおかつ実際に陳列・販売されていることが求められます。
医薬品を販売するECサイト上の表記ルール
医薬品を販売するECサイトの表記方法にも、さまざまなルールがあります。そのため、細かな規定は、一つひとつクリアしていくしかありません。
これから医薬品のネット販売を始める方は、まずはトップページに店舗名を掲載するとともに、店舗名を厚労省HPにある「一般用医薬品の販売サイト一覧」に掲載してもらうための準備を進めていきましょう。
表記すべき項目一覧 |
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医薬品の情報提供・ネット販売上のルール
医薬品をネット上で取り扱うときには、お客様への情報提供や販売時に、法律(薬機法第24条)で定められた以下のようなルールを守る必要があります。
使用者の状態などの確認
厚生労働省では、医薬品および薬剤使用の安全性を確保するために、第一類医薬品のネット販売をおこなう場合、薬剤師にその薬を使う人の状態などを確認することを義務付けています。購入者は、医薬品の注文時にECサイトに用意された専用フォームやメールを使い、以下のような項目をショップ側に送信します。
・性別、年齢
・症状
・副作用歴の有無やその内容
・持病の有無やその内容
・医療機関受診の有無やその内容
・妊娠の有無や授乳中であるかどうか
・その他気になること など
販売記録の作成・保存
薬事監視の実効性確保や安全対策の観点から、販売記録の作成と2年間の保存も求められています。具体的な項目は、以下のとおりです。
・品名
・数量
・販売日時
・販売、情報提供等をおこなった薬剤師または販売登録者の氏名
・購入者が情報提供等の内容を理解した旨の確認
・購入者の連絡先(努力義務)
ただし、この義務付けがあるのは、要指導医薬品もしくは第一類医薬品のみです。第二類医薬品または第三類医薬品については、販売記録の作成・保存が努力義務になります。書面に代えて、電磁的記録の作成や保存も可能となります。
購入者による口コミ・レビューの禁止
医薬品は本来、個々人のそのときの症状にあわせて使うものです。したがって、体質や症状の異なる他人からの効果・効能の口コミ、レビューは禁止されています。
また、過去の購入履歴などにもとづき、特定商品の購入勧誘を自動的におこなうレコメンドも禁止です。
医薬品のネット販売にはたくさんのルールがある
医薬品のネット販売には、ここまでご紹介した以外にも以下のようなルールがたくさんあります。
・用法用量・服用時の注意点の提示
・購入者が情報提供内容を理解した旨の確認
・購入者に再質問がないことの確認
・指定第二類医薬品について、禁忌の確認を促す表示や掲示
・乱用のおそれがある医薬品の販売個数制限
・オークション形式での販売禁止
・薬事監視への協力 など
このうちひとつでも基準から外れた場合、ECサイトでの取り扱いが難しくなります。ですから、販売に向けた準備をする場合は、厚生労働省の信頼できる情報を確認しながら、慎重に手続きなどを進めるようにしてください。
まとめ
医薬品のネット販売をするには、薬剤師や登録販売者の有資格者の確保や、数々の条件やルールをクリアしなければなりません。また、利用者の多いネットショップの場合、法律で決められた内容以外に、幅広いお客様に対応できるだけの準備が必要となります。
高齢化社会への勢いが加速する近年では、薬局やドラッグストアに足を運ぶことができないお年寄りを中心に「ネットショップで医薬品を購入したい」というニーズが特に高まりつつあります。ですから、医薬品をネット販売するメリットは今後も確実に増えてくるでしょう。
将来的に一般医薬品をネットショップで売りたい方は、ぜひ当ページを参考に準備を進めてみてください。
また、ネットショップの開業については、『2021年最新版】ネットショップ開業・開設手順はこれを見れば完璧!初心者〜上級者向けにご紹介』で詳しく解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
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