日本全国に数多くのエステサロンが存在する中、メンズ向けのエステサロンも注目されています。
新たにメンズエステサロンを開業するにあたって考慮したいポイントや、開業までのプロセス、サロンの経営を成功させるためのポイントを解説します。
メンズエステサロンは開業しやすい
脱毛やアロマを使ったトリートメントなど、男性をターゲットにしたメンズエステサロンが全国各地で展開されています。
若年層だけでなく幅広い層の男性から注目されており、ニーズの高まりからメンズエステサロンを開業したいと考える人も増えているようです。メンズエステサロンを開業するにあたって、まず押さえておくべきポイントを解説します。
方法によっては低予算でも始められる
エステサロンといえば、大がかりな設備が必要というイメージを持つ人もいるでしょう。しかし、個人で経営する場合、大手のサロンとは違った方法をとることで低予算でも開業できます。
例えば、美容機器を使用しないメニューのみ提供したり、自宅サロンとして開業したりすることで、設備や店舗にかかるコストの削減が可能です。
機械を使用しない施術のみ行うのであれば、100万円程度の初期費用で始められるケースもあります。
自宅でサロンを開業するのも、メンズエステサロン開業時の出費を抑える方法です。店舗とするテナントを借りるとなると、物件の取得費や外装・内装の工事費などで350万~500万円は費用がかかります。
一方、自宅の一部をサロン仕様に改装するなら、20万円程度の内装工事費で済むケースも珍しくありません。テナントサロンと比べ、初期費用を大きく抑えられるでしょう。
基本的に資格はいらない
メンズエステサロンを開業するのに、基本的に特別な資格は必要ありません。エステティシャンになるために学歴や資格は不要なため、誰でもサロンの開業は可能です。
ただし、顧客から信頼を得るために、多くの人が民間団体の資格を取得したり、独自にエステ技術の研さんに努めていたりします。
安定して顧客を獲得し続けるには、ある程度の知識と技術・施術の経験は必要です。例えば、ひげをはじめとした脱毛施術にも資格は不要ですが、脱毛機器や脱毛そのものについての知識は求められます。
そのため、人気のエステサロンでエステティシャンとして技術と経験を身に付けた後に、独立してメンズエステサロンを開業する人も少なくありません。
女性サロンに比べ競合が少ない
メンズエステサロンは女性向けのエステサロンに比べ、現状では競合が少ないのも特徴です。
エステサロン全体を見れば全国各地にさまざまな形態で存在しており、競争が激しくなっています。しかし、男性向けのサロンは2000年頃から注目され始め、店舗の数は女性向けサロンと違ってまだそこまで多くありません。
さらに、近年は男性の美容に対する意識が変わってきており、メンズエステサロンの需要は今後も高まると予想されます。早期に参入することで、固定客を獲得しやすい時期といえるでしょう。
開業の際に考慮したいポイント
メンズエステサロンを開業する際には、提供するメニューに注意しましょう。『美容行為』や『医療行為』にあたる施術には、国が定めた資格が必要です。それぞれにどのようなメニューが該当するかを理解し、施術の内容を考えなければなりません。
美容行為の有無
美容行為に該当する施術を行うには、『美容師免許』が必要です。美容師免許が求められる内容には、ヘアカットやカラー・パーマ・メイクといった方法で、容姿を美しくする行為が該当します。
メンズ向けサロンの場合、例えば眉毛のデザインやカットを提供には美容師免許が必要です。開業にあたっては、保健所に『美容所開設』の届け出もしなければなりません。
眉毛を整える『アイブロウリスト』も、美容師資格がなければ業務に当たれない仕事です。
専門サロンか他のメニューとの併用かにかかわらず、眉毛のデザインを提供するなら、自身が美容師免許を取るか資格保有者をスタッフとして雇用する必要があります。
一方、眉毛のワックス脱毛に関しては、現時点で資格がなくても施術が可能です。提供したいサービスが美容行為に当たるかどうかは、事前に確認しておきましょう。
ただ、資格が不要なサービスに関しても、トラブルを起こさないように技術をしっかりと磨いておく努力が大事です。
参考:美容師法概要|厚生労働省
医療行為はNG
医療行為を伴う施術は、国家資格を持つ医師しか提供できません。人体に危険を及ぼす可能性のある施術は、内容によっては医療行為とみなされます。無資格で提供すると処罰の対象になるため、メニューを考えるときは注意しましょう。
例えば、エステサロンで提供される機会が多い脱毛に関して、かつて民間のサロンがレーザー脱毛を行って逮捕に至った過去があります。
厚生労働省はレーザーを用いた脱毛について、使用する機器が医療用であるかどうかを問わず医療行為に該当し、医師免許のないエステサロンが提供した場合は違法行為となる旨の通達を出しています。
エステサロンが脱毛を提供する場合、皮膚への負担が小さく毛乳頭を破壊しない『美容ライト脱毛(光脱毛)』しか選べません。『永久脱毛』は医療レーザー脱毛でしか実現しないため、宣伝の際も注意が必要です。
参考:各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局医事課長通知|厚生労働省
開業に向けた具体的な準備
メンズエステサロンを開業するには、具体的にどのような準備が必要なのでしょうか?大まかな流れとともにポイントをつかんで、スタートまでの計画を立てましょう。
ターゲットとコンセプトを決める
エステサロンの開業を決めたら、まずは集客したいターゲットと店舗のコンセプトを決めるところから始めます。
『誰にサロンを利用してもらうのか』『顧客のニーズは何か』『どういったサービスを提供すべきか』といったコンセプトを定めるためにも、事前に調査をしましょう。
エステサロンを利用したい男性の中にも、さまざまなタイプが存在します。ニーズがそれぞれ異なるため、ターゲット設定は極めて重要です。
大ざっぱにターゲットを決めるのではなく、事前にしっかりと市場調査をした上で、ターゲットとする人・提供するメニュー・立地を明確にしておきましょう。
物件を探す
顧客ターゲットとサロンのコンセプトを決めたら、店舗にする物件を探します。集客のしやすさを求めるならテナント物件が理想ですが、一般の賃貸物件に比べて費用が大きくなる点には注意が必要です。
初期費用を抑えつつテナントを利用するなら、『居抜き物件』を狙ってみましょう。前に入っていた店の設備を引き継げるため、内装費や設備費を節約できるのがメリットです。
個人営業の場合は、自宅の一部をサロンとして改装したり、賃貸マンションを借りてサロンを開業したりする方法もあります。
賃貸ならテナントを借りるよりも費用を抑えられますが、賃貸マンションを借りる場合は、店舗として利用できる物件かどうかのチェックが必要です。
集客ツールを決める
集客の方法や使うツールも、メンズエステサロンを開業するまでに考えておきたい要素の一つです。近年は検索広告やSNSの広告など、オンラインでの集客がメインになっており、『Google マイビジネス』を使った宣伝も注目されています。
メインターゲットにしている男性客が情報収集に使っている媒体を、入念に調査をした上で宣伝ツールを選びましょう。
個人的な思い込みで判断したり、インターネット上で無根拠に書かれている情報を信じてしまったりするのは危険です。実際に調べてみなければ実態は分からないため、需要とズレたツールを選んで失敗しかねません。
サロンによってターゲットの属性や価値観、ライフスタイルは変わってくるはずです。さまさまな情報源を使いながら、ターゲットに合った宣伝方法を見つける必要があります。
税務署に開業届を提出する
個人事業としてエステサロンを開業する場合、必要な手続きは税務署に『開業届』を出すだけです。
開業の届出をしなくても罰せられることはありませんが、法的に提出が義務付けられています。さらに税制上の優遇措置を受けられる青色申告をするためには、開業届の提出が欠かせません。
開業届はサロンを管轄する税務署や、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。必要事項を記入し、開業後1カ月以内に提出しましょう。
参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
メニューで変わる設備や備品
エステサロンは、提供するメニューによって必要な設備や備品が変わってきます。脱毛やアロマトリートメント・フェイシャルケアなど、メニューに合わせた機器を導入しなければいけません。
メンズエステサロンのコンセプトと照らし合わせ、どのような設備が必要になってくるのかを考えましょう。
本格的なメニューには予算が必要
本格的なメニューの提供には、相応の予算がです。ベッドやチェア・待合室に置く机や椅子・ソファーなどは、顧客に快適な空間を提供するために欠かせません。
また、施術用の機器は数万円で済むものから、500万円以上するものまで幅広くあります。提供したいメニューや予算との兼ね合いを考え、慎重に選択しましょう。
こだわりが過ぎると、予算がいくらあっても足りなくなってしまいます。開業当初は必要最低限の設備で運営し、集客が安定してきたら徐々に設備や備品を増やしていくのも一つの方法です。
機器を使わないお店でも「おもてなし」の工夫を
たとえ十分な予算がなかったとしても、顧客満足度を上げるサービスの提供は可能です。機器を使わないメニューがメインのエステサロンでも、特別感やホスピタリティの演出はできます。
例えば顧客に対して、スキンケアや体調管理のための助言や提案をしたり、オーナーが取り寄せた独自の飲み物を提供したりする『おもてなし』は、予算が小さくても実践できるでしょう。
特に飲み物の提供は、工夫次第でサービスの質を向上させられる戦略です。既存の商品でも質の良いカップで提供する・好みで選べるバリエーションを用意するといった施策で、満足度の向上を図れます。
サロン開業を成功へつなげる要素
メンズエステサロンの開業をするなら、長く経営を続けていけるように準備を進めましょう。重要なのは立地と競合と差別化するためのサービス、リピーターを増やすための取り組みです。
ターゲットが通いやすい立地
エステサロンをはじめ、店舗型のビジネスでは立地が極めて重要です。開業後に顧客を集められなかったとしても、一度オープンしたサロンの場所を変えるのは容易ではありません。
事前に集客が見込める場所はどこか、慎重に検討しましょう。まずはターゲットとしている男性客が通いやすい立地かどうか、競合店の出店状況も確認しながら判断します。
駅前や繁華街の近くは人が多く集まる場所ですが、家賃は高くなるでしょう。比較的家賃の安い郊外でも、通いやすい場所はあります。集客と店舗運営にかかるコストのバランスを考えて、出店エリアを決めるのがポイントです。
店舗物件の候補を決めたら、実際に現地に出向いて周辺の状況を確認してみましょう。人通りに問題はないか・車で来店したい顧客に対応できるかなど、事前にしっかりと調べておくことが大事です。
他店と差別化できるサービス
女性向けのエステサロンに比べて、メンズエステサロンは絶対数がまだ少ない状況ではありますが、将来競合が増えることも予想されます。
他のエステサロンとの違いをアピールできるサービスは、ライバルに埋もれないために重要です。ありきたりなサロンでは、顧客に通い続けてもらうのが難しくなるでしょう。
競合店と比べて優れているポイントや他店ではなく自分のサロンを選ぶ理由を、顧客に分かりやすい形での提示が必要です。
メニューの項目はほとんど同じであっても、小さなこだわりで差別化できる可能性はあります。顧客のニーズをよく調べた上で、差別化のポイントを考えてみましょう。
リピーターを増やす取り組み
ほとんどのビジネスでは、リピート客からの売り上げが利益の大半を占めるようになります。リピーターをいかに増やせるかが、サロン経営の成功を大きく左右するといっても過言ではないでしょう。
新規顧客の獲得はもちろん重要ですが、リピーターを増やすための取り組みも力を入れたいポイントです。
例えば、一度来店した顧客に対してはリスト化し、DMやメルマガを送り、来店を促します。さらに一人ひとりにマッチしたサービスを提供すれば、顧客の悩み解決につながり、リピートしてくれる可能性が高まります。
また、近年はスマホから来店予約をする人が増えているため、オンラインで手軽に予約できるような環境を作っておきましょう。
STORES 予約(ストアーズ予約)のように無料で導入できるサービスを使えば、初期費用を抑えつつリピーターの増加につなげられます。
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丁寧な準備をしてサロン開業の計画を
メンズエステサロンは女性向けサロンに比べると、まだ数は多くありません。早期に参入すれば、比較的スムーズに顧客を獲得できる可能性があります。
開業にあたっては、顧客ターゲットとサロンのコンセプトを設定し、入念に調査した上で店舗の立地を決めるのがポイントです。
集客媒体やリピート率を上げる施策も、ターゲットに合わせて考えなければなりません。必要な準備をしっかりと理解して、開業までの計画を立てましょう。