古くは江戸時代から人々に親しまれてきた駄菓子は、現在も種類やターゲットを広げながら販売されています。昔は多かった駄菓子屋は、今はどうなのでしょうか?
本記事では、駄菓子業界の現状と、どうすれば開業できるのかを解説します。また資金や手続きについても紹介しますので、参考にしてみてください。
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駄菓子屋の経営は狙い目?
駄菓子は多くの日本人に愛されてきました。子どものころ、近所の駄菓子屋によく通っていた人も多いはずです。
現在、駄菓子屋の業界はどのような状況なのでしょうか?開業にあたっては、ターゲットとなる層の変化にも着目してみましょう。
駄菓子屋は昔に比べて減っている
日本全国で、駄菓子屋の数は徐々に減少しています。多くの人がイメージする駄菓子が登場したのは昭和20年代です。1980年代から販売量が大きく減少しており、市場も年を追うごとに小さくなっています。
駄菓子屋という文化が始まった戦後は、いわゆるベビーブームで子どもの数自体が多かった時代です。子どもの安いお小遣いでも買えた駄菓子の需要は大きく、日本全国で生産されていました。
しかし、少子化が進むにつれて駄菓子の需要は減り、それに伴って販売量・生産量も落ちていったのです。
ただし、供給の絶対量は昭和期に比べて大きく減少してはいるものの、近年でもコンビニエンスストアやスーパーマーケットを中心に駄菓子は売られています。今後、全く需要がなくなるとは考えにくいでしょう。
参考:2011年度 産業調査実習報告書|同志社大学社会学部産業関係学科
ターゲット層が変わってきたという見方も
駄菓子は本来、子ども向けに製造・販売されていたものです。しかし、近年はターゲット層が変わってきたという見方もされています。
駄菓子が大量に製造・流通されていたころに子どもだった年代が大人になり、その懐かしさから購入に至るケースが増えているのです。
当然、子どもにもそれなりの需要はありますが、今後の駄菓子屋を考えるとき大人もターゲットになるでしょう。
現代の子どもに受けるようなパッケージだけでなく、あえて『レトロ感』を演出して、大人の気を引く商品を開発している業者も少なくありません。
海外から輸入した駄菓子が増えているのも、時代が変わってきたポイントです。これから駄菓子屋を始めるなら、ターゲットとする層に合わせて扱う商品を選んでいく必要があります。
駄菓子屋開業・経営に必要な資金
駄菓子屋を開業したい人は、必要な資金について確認していきましょう。他の業種に比べてイメージしづらい部分もありますが、事業形態は一般的な店舗型の小売業と変わりません。
開業に必要な金額とは
駄菓子屋の開業にかかる金額は、お店の規模や内装のこだわり方によって変わってきます。
テナントを借りて凝った内装にしようとすれば、数百万円は初期費用が必要になるケースもあるでしょう。ただし、焼肉屋やラーメン屋などの飲食店に比べると、必須の設備にかかる費用は大きくはありません。
内装にもこだわらないなら、前の店主が設備を残した『居抜き物件』を利用する方法があります。
自宅の一部をお店として改修するのも、物件にかかるコストを抑える方法です。駄菓子を並べるための棚やケースなど最低限のものだけ用意すれば、そのまま開業できる場合もあります。
実際、自宅の改修とすでに持っていた設備のみで開業できるなら、初期費用を20万円以下に抑えることも可能です。
仕入のコストも確認
駄菓子の仕入コストもあらかじめ確認しておきましょう。仕入コストがかさみがちな小売業の中で、駄菓子屋は仕入の費用が非常に安いのが特徴です。
駄菓子は商品1個あたりの単価が低いため、開業にあたって大量に仕入れても10万〜20万円ほどで済むケースもあります。
例えば、単価が20円の商品を100種類・各100個ずつ仕入れても、総額で20万円です。駄菓子だけを売るのであれば、仕入コストはそれほどかかりません。
ただし、アイスクリームをはじめ冷凍が必要な商品を扱う場合、仕入額は跳ね上がります。毎月の電気代もかかってくるため、何を売るかはっきりと決めて予算計画を立てましょう。
駄菓子屋を開業するための手続き
駄菓子屋の個人開業には、煩雑な手続きは必要ありません。ただし、営業の仕方によっては許可が必要になるケースがあります。基本となる『開業届』と場合によって必要な『飲食店営業許可』について、詳しく見ていきましょう。
「開業届」は個人事業の基本
駄菓子屋に限らず、個人で事業を始めるときは、その地域を管轄する税務署へ開業届の提出が必要です。
開業届を出さずに営業しても罰則はありませんが、提出は義務とされています。開業後1ヶ月以内には、必要事項を書き入れて提出しましょう。
開業届は税務署の窓口で受け取れるほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。オープン前後の忙しさで忘れないよう、余裕を持って準備をしておくと安心です。
参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
営業の方法によっては「飲食店営業許可」
単に仕入れた駄菓子を販売するだけなら、駄菓子屋に特別な営業許可は必要ありません。ただ、仕入れた商品を別の容器に入れ替えたり、店内で調理したものも売ったりする場合『飲食店営業許可』が求められます。
飲食店営業許可は管轄の保健所に申請し、定められた条件を満たせば下りる仕組みです。『食品衛生責任者を1人以上置いている』という要件があるため、食品衛生責任者の資格も取得しておきましょう。
栄養士や調理師などの資格があれば新たに取る必要はありませんが、持っていなければ各都道府県の食品衛生協会が実施している講習を受けます。
一口に駄菓子屋といっても、必要な手続きは営業の仕方によって変わります。自分のお店で何をどのように売りたいのか、準備の段階でしっかり決めておきましょう。
参考:食品衛生責任者|東京都福祉保健局
開業した駄菓子屋を盛り上げるには?
必要な資金や事務手続きが分かっても、開業後の繁盛も考えなければ長く駄菓子屋を続けられません。「自分の駄菓子屋を持ちたい」という夢をかなえるため、成功につながる取り組みも押さえておきましょう。
売る数をとにかく増やす
駄菓子は仕入の単価が低い分、1個当たりの売上額も小さい商売です。1,000円分の商品を売ったとして、利益はせいぜい200円程度にしかなりません。駄菓子屋で儲けるためには、『とにかく数を売る』という意識が必要です。
儲からないようにも感じられますが、もともと安い商品であるために、価格競争はほとんど発生しないともいえます。一定の集客が見込めるお店に育てられれば、安定した利益が期待できるでしょう。
値下げをする必要はまずないため、売れ筋の商品や安定して売れる商品を積極的に仕入れるのが成功のカギです。
近年はコンビニやスーパーマーケットに、需要の高い駄菓子が並んでいます。すでにある店舗の商品を調べ、ターゲットに喜ばれるラインナップを用意しましょう。
認知されるためのコンセプトが重要
駄菓子屋を広く認知させるには、コンセプトづくりが重要です。コンセプトとは、ターゲット層や商品の価格帯・店舗の雰囲気・提供するサービスなど、『どういった店にしたいのか』を表す概念です。
設定したコンセプトによって、取り扱うべき商品や店舗の規模・サービス内容が変わってきます。より繁盛するための施策を練るとき、軸になるのがコンセプトです。
あくまでも一例ですが、次のようなコンセプトのもとに成功している駄菓子屋があります。
- 子ども向けに100円以上の商品を置かない
- 大人向けのスタイリッシュな内装で、海外で流行している有名な駄菓子を売る
自分がどういったお店を開きたいのか明確にした上で、十分なニーズが見込めるかを調査してコンセプトを決めましょう。
店舗以外の選択肢も用意しておこう
駄菓子屋といえば、ごく小規模な店舗で販売しているイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、駄菓子を売る方法は実際の店舗に限りません。
近年、ネットショップで駄菓子を売るケースが増えています。インターネット広告やSNSで積極的に宣伝した結果、毎月安定した売上を上げている駄菓子屋も少なくありません。
ネットショップなら、お店を開けない時期や時間帯でも売上を出せます。実店舗の開業を目指している人でも、ネットショップを同時に開くことでより経営を安定させられるでしょう。
ほとんどコストをかけずに自分だけのネットショップを開けるサービスがあり、ネットショップ開店のハードルはかなり低くなってきたといえます。
例えば、専門知識がなくてもネットショップを開設できる STORES なら、パソコンやスマートフォンから簡単にネットショップのデザインすることが可能です。コンセプトに合ったショップをスムーズに作れるでしょう。
STORES|自分でつくれる、本格的なネットショップ
魅力的なコンセプトの作り方
駄菓子屋を始めたい理由や譲れないポイントによって、お店のコンセプトは変わってくるでしょう。ただ、方向性を決めるときに外せない取り組みもあります。次のポイントを意識すると、コンセプトを設計しやすくなります。
ターゲットをはっきり決める
始める駄菓子屋のターゲットが明確に決まっていないと、商品選びや内装・宣伝するポイントなど、あらゆる施策の方向性が一貫しません。
市場全体の動向や駄菓子を好んで買っている層を分析して、安定した売上につながりそうなターゲットを決めましょう。
年代や男女比率・どういったライフスタイルなのかなど、さまざまな観点からの分析が重要です。特に主なターゲットを子どもにするか大人にするかは、お店のコンセプトを大きく左右します。
提供スタイルによって売上が変わってくる場合もあるので、どういったシチュエーションで駄菓子が好まれるのかという観点から、ターゲットを考えてみるのもよいでしょう。
ライバルを調査する
ターゲットの分析とともに、ライバル店を調査することで、よりコンセプトが明確になってきます。
競合よりも質の高い商品を提供したり、違った分野の商品を取り扱ったりすることで差別化の戦略を立てられるためです。ライバルと違った魅力があれば集客しやすく、販売数の増加につながるでしょう。
差別化の方法は人によって違うものの、いずれも競合をしっかりと調査・分析した上で、一定のニーズを見込めるものにしなければいけません。
自店の強みを確認
ターゲットや競合の分析だけでなく、自店の強みも考えてコンセプトを設定しましょう。データだけを見て差別化を図っても、実行できなければ意味がありません。
自店の立ち位置を明確にするには、『自分自身が顧客に何を提供できるのか』『そこにどのような価値があるのか』をはっきりさせる必要があります。
店舗が持てる強みの例としては、立地や品ぞろえ・サービスの質・企画力などが挙げられます。考えられる強みを洗い出したら、簡単なキャッチフレーズに表してみましょう。
「7W2H」の活用がおすすめ
コンセプト作りがうまくできない場合は、提供するサービスを次のように『7W2H』に当てはめて考えてみましょう。
- Who:誰が?(店主やスタッフ)
- Where:どこで?(お店の場所や店舗以外の販売方法)
- What:何を?(そろえる商品)
- Which:どれを?(売りにする商品)
- Whom:誰に?(ターゲット)
- Why:なぜ?(駄菓子屋を開業する理由)
- How:どのように?(売るときの工夫)
- How much:いくらで?(値段の設定)
まずは項目ごとに答えを考えて、それぞれの基準で深堀りしていくのがおすすめです。詳しく書けない部分は、ターゲットや競合の分析をし直すことで、徐々に明らかになってきます。
単純に当てはめるだけでコンセプトが完成するわけではありませんが、まずは考えの取っ掛かりとして活用してみましょう。
駄菓子屋を続けるには情熱以外も重要
子どもの数が多かった昭和に比べると、駄菓子の市場はかなり縮小しています。しかし、コンビニやスーパーでまだ駄菓子が売れている状況や、大人からの人気が高まっていることを考えると、やり方によって成功を期待できるでしょう。
大規模な小売店以外にも、さまざまなコンセプトの駄菓子屋が登場しており、メディアにも取り上げられる店舗も少なくありません。
開業するなら、単に自分がやりたいことや憧れだけではなく、ターゲットや競合をしっかりと調査・分析することがポイントです。販売数を上げられれば、単価は安くても安定した利益につながります。
コンセプト設計から事務的な手続きまで、開業までに必要な準備をしっかりと把握して駄菓子屋のオープンに備えましょう。