コロナ禍で自宅時間も増え、お世話をしやすくなったことから、ペットを飼う人が増えています。
そうしたニーズ拡大の中、ペットショップを開業しようと考えている方もいるかもしれません。しかしペットショップは細かな規定があるうえ、生き物を扱うため難しいイメージがあるのも事実です。
そこで今回は、ペットショップを開業するのに必要な資格や許可、資金の目安を紹介します。動物の仕入れ先やペットショップを開業するのに必要な資金の目安などもお伝えしますから、ペットショップの開業に興味のある方は参考にしてみてください。
- ペットショップの開業形態の種類
- ペットショップ開業に必要な資格や許可
- ペットショップ開業後の仕入れ先はどうする?
- ペットショップを開業するのに必要な資金の目安
- ペットショップを成功させるために必要なこと
- ペットショップの開業ポイントまとめ
ペットショップの開業形態の種類
ペットショップを開業するにはどのような形態があるのでしょうか。ここでは3つの形態を解説します。
①店舗を構えて開業する
ペットの売買をインターネット上のみで行なうことは禁止されているため、ペットショップは無店舗で営業できません。また店舗をかまえる場合は、動物愛護管理法で店舗の構造や規模などに細かなルールがあります。
店舗の場合、集客が見込める立地を自分で選べることがメリットですが、物件オーナーによっては動物の鳴き声や臭いなどを嫌がる人もいるため、物件がなかなか見つからなかったり、賃料が高めになったりすることもあるでしょう。
②自宅で開業する
自宅で開業すれば、賃貸料もかからなくて良いのではと思う方もいるかもしれません。ただ、立地が店舗向けではないこともあるので注意が必要です。
また、動物愛護管理法の規定をクリアしなければなりませんし、ご近所のなかには、動物の鳴き声や臭いを嫌う人もいるでしょうから、防音や防臭対策をしっかり行なう必要もあります。
③フランチャイズを利用する
フランチャイズを利用してペットショップを開業する方法もあります。フランチャイズは、知名度があるため集客が容易になることや仕入れルートを最初から確保できることなどが利点です。経営のノウハウを教えてもらえるのもメリットでしょう。
一方で、フランチャイズでは保証金や加盟金のほか、毎月のロイヤリティなどの負担がかかる点に注意が必要です。フランチャイズを利用する際は、ロイヤリティなどの金額をよく確認しておきましょう。
ペットショップ開業に必要な資格や許可
ペットショップを開業するには、第一種動物取扱業への登録などをしなければなりません。必要な手続きなどを確認していきましょう。
第一種動物取扱業
ペットショップを開業するには、第一種動物取扱業への登録が必要です。
第一種動物取扱業は以下の7種別に分かれています。
- 販売
- 保管(ペットホテルなど)
- 貸出し(ペットレンタルなど)
- 訓練
- 展示(動物ふれあいパークなど)
- 競りあっせん
- 譲受飼養(老犬ホームなど)
開業するペットショップの業態に合わせて、必要な種別の申請を行なってください。申請はお店の所在地を管轄する都道府県の動物愛護センター窓口で行ないます。手数料は都道府県によって若干異なることもありますが、1種別あたり15,000円程度です。複数種別を同時申請すると割安になる自治体もあります。
申請から営業開始までの流れは、以下のとおりです。
- 動物取扱責任者の選定
- 申請
- 施設検査
- 登録証交付
- 営業開始
営業を開始した後は、年に1回以上動物取扱責任者研修を受講しなければなりません。また登録は5年ごとに更新が必要です。
動物取扱責任者の選任
第一種動物取扱業を登録する前に、動物取扱責任者を選任しなければなりません。動物取扱責任者は常勤職員から選任しなければならず、次の4つのうちいずれかを満たす必要があります。
- 獣医
- 愛玩動物看護師
- 実務経験など+専門学校などを卒業
- 実務経験など+愛玩動物飼育管理士などの資格を取得
学校や資格は、認められる場合と認められない場合があるため、詳細は管轄の動物愛護センターに確認してください。
「実務経験など」とは半年以上の実務経験か実務と同等の1年以上の飼養経験が必要です。飼養経験とはペットの飼育程度では不十分で、アルバイトやボランティアなどが想定されています。飼養経験についても、詳細は動物愛護センターで確認してください。
犬猫へのマイクロチップ装着の義務化
動物愛護法の改正により、2022年6月から、犬猫へのマイクロチップ装着がペットショップに義務づけられます。マイクロチップが制度化されたのは、捨てられたり迷子になったりした犬猫の飼い主を探し出すためです。装着に5,000円程度かかるようになるため、注意してください。
ペットショップ開業後の仕入れ先はどうする?
おもな動物の仕入れ先としては、ブリーダーやオークション、自家繁殖があります。それぞれのメリットとデメリットを確認していきましょう。
①ブリーダー
ブリーダーとは血統書付きの動物の繁殖を行なっている業者です。ブリーダーから仕入れるメリットは、実際に実物を見られることが挙げられます。
一方でブリーダーのなかには、育成環境が劣悪であったり、健康に問題がある生体を売ったりする悪質な業者もいるのも事実です。悪質なブリーダーから動物を仕入れていると、お客さまからのクレームなどにつながる可能性があるため、注意してください。
②オークション(セリ市)
オークションとは、業者間で行なわれるセリ市です。メリットとして、ブリーダーから仕入れるよりも安く仕入れることができる点や動物の種類が豊富なことなどが挙げられます。
一方で、病気にかかっていない生体を仕入れるためには見極め力が必要です。また、優良な生体はブリーダーから直接売られることが多いため、ブリーダーで仕入れるよりも品質が劣りがちなのもデメリットでしょう。
③自家繁殖
自家繁殖のメリットは、ブリーダーやオークションを通さないため、中間マージンを支払う必要がないことです。病気にかかりにくいことや、店舗で親犬(猫)の姿を見せることができるのもメリットでしょう。
一方で、自家繁殖では種類を増やすのに限界があります。また数が安定しないのもデメリットです。安定した数をそろえるにはブリーダーやオークションなどを併用する必要があります。
ペットショップを開業するのに必要な資金の目安
ペットショップを開業するのにどの程度の資金が必要なのでしょうか。必要な資金の目安を解説します。
初期費用
ペットショップを開業する初期費用としては、次のようなものが挙げられます。
項目 |
金額 |
物件取得費 |
90~300万円 |
内外装工事費 |
400万円 |
仕入れ |
120~150万円 |
什器・備品費 |
120~200万円 |
運転資金 |
660~690万円 |
合計 |
1,390~1,740万円 |
初期費用の合計は1,390~1,740万円です。もちろん立地によって物件取得費などは大きく変わってきますし、居抜きを使えば内外装工事も安くできます。
物件取得費は、20坪の店舗を賃貸料30万円で借りると想定しました。契約時には契約金(保証金)が賃貸料の3~10ヵ月必要です。
内外装工事は坪20万円で計算しました。ペットショップでは防音対策や防臭対策が必須のため、内装工事はしっかりと行なう必要があるでしょう。
仕入れは1頭あたり6万円、20~25頭を仕入れると想定しています。
運転資金はランニングコスト6ヵ月分として計算しています。
毎月の運営費
次に毎月のランニングコストをまとめました。
項目 |
金額 |
賃貸料 |
30万円 |
仕入れ |
60万円 |
飼育費 |
20~25万円 |
合計 |
110~115万円 |
生体のみを扱っていると想定しました。仕入れは月に10頭(1頭あたり6万円)、飼育費は20~25頭を常時飼育するとして、1頭あたり1万円として計算しています。
このほかに、人を雇えば人件費が必要です。また、水道光熱費や広告宣伝費、消耗品費など細かな費用も必要ですが、今回のシミュレーションでは省略しています。
借入について
ペットショップを開業するにはある程度まとまった資金が必要です。自己資金だけでは難しい場合は、金融機関からの融資を検討してはいかがでしょうか。
なかでも日本政策金融公庫は、審査が通りやすいとされています。「新創業融資」であれば保証人や担保が不要で最大3,000万円融資を受けられます。開業資金に困った場合は、新創業融資などの制度を活用してみてください。
ペットショップを成功させるために必要なこと
ペットショップを成功させるためには、ほかのお店にはないような工夫が必要です。成功させるために必要なことを確認していきましょう。
法律の基準をよく確認しておく
ペット関係のビジネスでは、過去に動物虐待事案が発生したことなどから、細かな規定や基準が多く存在します。動物愛護法や環境省のホームページなどで、よく確認しておきましょう。希少動物を扱いたい場合は、ワシントン条約も知っておく必要があります。
動物に関する知識を身に付ける
ペットショップは、アパレルなどほかのビジネスとは違って生き物を扱うため、健康な生体かどうかを見極める目利きが必要です。目利き力を鍛えるためには、扱う動物に関する知識が不可欠でしょう。可能であれば、開業の前にペットショップなどで働き、動物に関する知識を深めることをおすすめします。
トリミングサービスやペット用品などの販売も行なう
ペットショップでの動物の販売は、利益はそれほど出ないといわれています。どうしても一定数は病気で死んでしまいますし、売れ残ってしまうと値下げせざるを得ないことなどが理由です。
そうしたことから、売上を安定させるには動物の販売だけでなく、動物を販売した購入者に向けて、トリミングサービスやペット用品などの販売も並行して行なう必要があるでしょう。
ペット市場は高級食材を使ったペットフードなど、高価格帯の商品やサービスが普及しています。ペットにお金を使う人も増えており、こうした単価の高いサービスも比較的売りやすい状況です。
生体はインターネットでは販売できませんが、ペット関連商品はインターネット通販も可能です。ネットショップの開設にはホームページをつくらなければなりませんが、最近では簡単にホームページをつくれるサービスもあります。
例えば、ネットショップ作成サービスの STORES では、ネットショップに特化したホームページを簡単に作成可能です。無料のフリープランでも、クレジット決済や商品管理などネットショップ運営に必要な機能に対応しているので、コストを抑えながら本格的なショップ運営が実現します。
『ネットショップでペット用品を販売する方法は?開業のポイントやメリットも解説』も参考にしてみてください。
ペットショップの開業ポイントまとめ
ペットショップを成功させるには、法律の基準をよく確認するとともに、動物に関する知識が不可欠です。個体差の大きい生き物を扱うことから、他の商材よりも仕入れの際の目利きが重要になるので、ペットショップでの就業経験などがあるとよいでしょう。
また、高利益体質のペットショップを運営するなら、生体だけでなくペット関連商品の販売も手がけていくと良いです。ペット市場には高級食材を使ったペットフードなど高額商品も多く存在するので、そういった高価格帯の関連商品を取り扱うことで、売上を伸ばすことができます。
店舗の施設基準や動物愛護法による基準など、順守すべき点が多く難易度も高いペットショップ開業ですが、ペット関連の市場は今後も伸びることが予想されるので、参入する価値はあります。動物好きな方は、ぜひ開業を検討してみてはいかがでしょうか?