伝統技術である箔押し印刷を用いて、マスキングテープやレターセットなど、一般の人でも気軽に購入できる商品を販売しているネットショップを運営している、コスモテックさん。
今回は完全受注生産商品で STORES でトップに入るくらい大人気だった商品、
『白夜飛行』のマスキングテープの製造の様子も見学させていただけるとのことで、
代表の保坂さんとネットショップを担当している青木さんに、出張インタビューさせていただきました!!
「作ってみたい」「やってみたい」に挑戦出来る会社
STORES編集部(以下S):
今日はどうぞよろしくお願いします!!すごく素敵な商品がたくさんですね!!
コスモテック代表取締役 保坂さん(以下保坂さん):
ここにあるものは全部うちの会社が手がけたものなんです。
※インタビューをさせていただいたお部屋には、コスモテックさんがSTORES上で販売されている商品や、今まで製作された商品がたくさんありました!一部しか紹介できないのが残念!!
S:
すごい!こんなにたくさん!!ちなみに、コスモテックさんは印刷の会社…ですか?
コスモテック営業担当 青木さん(以下青木さん):
そうですね!!名刺やポスター、本やCDの表紙からステッカーまで、本当に幅広く印刷に携わっています。基本的にはデザイナーさんやクリエーターさんなど、デザイン関係の方からの依頼が多いですね。
保坂さん:
精密な箔押し加工などを手がけるところも今は少なくなってしまったので、うちは珍しい存在なのかもしれませんね。
※箔押し加工を得意とするコスモテックさんだけあって、いただいた名刺にも精密な箔押しが施されていました!思わずうっとりしてしまうほど綺麗な名刺でした。STORESの名刺も箔押しにしたい笑!
S:
なるほど!箔押し加工を得意とする印刷会社さんだからこそ、箔押し印刷の商品ができるわけなんですね!
あの…今更で申し訳ないのですが、箔押しとはどういうものなのですか?
保坂さん:
このような銅版を使って、箔を間にはさんで紙に押しあてるんです。そうすることによって、紙に箔が転写されていくんです。版画みたいな感じですね。
※箔押し印刷に使う版。まさに職人技です!
S:
この版から製作していくんですか?
青木さん:
はい!!これが箔押し加工に用いる『版』です!
S:
ものすごく高度な技術が必要そうに見えるのですが、やはり長年の経験が必要になってくるんでしょうか?
青木さん:
そうですね、精密なデザインの加工には高い技術力が必要になります。とても細かい作業なので、もちろん経験や忍耐力も。
うちでは加工の監督をしているのは技術力も経験も豊富な70代の佐藤という職人なんですが、実際に多くの作業をしているのは20〜30代の若い職人なんです。男女関係なく活躍してくれています。
※製造監督をしている佐藤さん。笑顔がとても素敵でした!
S:
若い方達が多いんですか??少し意外です!
青木さん:
そうですね。
最近だと、美大生から働きたいという声をもらうことがよくありますね。
やはり、現場で実際に手を動かしてものづくりしたいという方が多いんだと思います!
取引先やデザイナーさんから依頼を受けた時は、依頼主からの希望に沿った形になるようデザインのすり合わせを行って版を作っているんです。
でも、ネットショップで販売している商品は、作業をする職人たちからあがってきた「こういうものがあったら面白いんじゃないか」というアイディアから生まれたものを作っていることが多いんです。
だから、デザインも制作も職人たちが自分たちで行っているので、実際に自分の手や技術を生かしたい方にはぴったりなのかもしれません。
保坂さん:
基本的にうちの会社は「やってみよう」という気持ちを大切にしているんです。やってみなければわからないこともたくさんあるんですよね。
実際に、こんなもの売れるわけないよな〜という商品も、ネットショップに出してみたら買ってくれる人がいたりするんです!!
※箔押しのサンプルの冊子もネットショップに置いてみたら人気だったそう。既に完売していました…左下は佐藤さんの顔を箔押ししたもの。まさかな…と思っていたけれど、こちらも大人気だったそうです!
青木さん:
これ、「耳」っていう商品で、いわゆるマスキングテープを製造した際に出る印刷の余白部分で、本来なら捨ててしまう部分なんです。
でも、こういうのが欲しいって言う方もいるんです。
面白いですよね!!
ちなみにパンの耳の意味を込めて「耳」という商品名にしたんです笑
※まさか端材とは思えないクオリティ。ちょっと無機質というかシンプルな感じが他にはない良い味をだしています!
保坂さん:
だから私は新しいこと、やってみたいことなんかを提案されたら「いいじゃないか、やってみよう!」とよく言っています笑
ちなみにこのご祝儀袋は、女性の箔押し職人が自分が使うために作成したものなんですよ!ネットでも販売していて、かくれた人気商品なんですよ。
たぶん、小さな会社だからこそやってみたいことをすぐ形に出来るんだと思うんですが、そこは会社としてもとても大切にしています。
※女性の箔押し職人のアイディアから生まれたご祝儀袋。他の人とは絶対被らないから、喜ばれそうですね!
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やってみたい!を大切に、そして挑戦できる環境を大切にしているというコスモテックさん。
そんなコスモテックさんだからこそ、素敵な商品が出来るんだなと納得です。
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ネットショップは自立型クラウドファンディング
S:
今度はネットショップについて教えてください。
既に印刷会社として様々な仕事を請け負っている中で、どうしてネットショップで商品を販売してみようと思ったのですか?
青木さん:
デザイナーやクリエーターの方たちと作った作品をブログやSNSで紹介していく中で、一般の方からもこういう商品がほしいという声や商品開発のヒントとなるアイディアが寄せられるようになってきて、コスモテックの加工や製品に興味を持ってくれている人は意外といるんだな、
と思ったのがきっかけですね。
たくさんの方に知ってもらえるチャンスになるかなと思ったんです。
でも、大量生産したものを販売するというよりかは、
「ここでしか買えないもの」「今しか買えないもの」を売りたくて。
そこで、ネットショップをやってみようとなりました。
保坂さん:
今はデジタル化が発達しているので、正直、印刷業自体も厳しい時代です。
箔押し印刷みたいに、昔から伝わる伝統技術が用いられることも減り、危機的な状態です。
そんな中で、こんなに素晴らしい伝統技術があるんだぞっていうのをとにかくたくさんの方に知ってもらいたかったんです。
多くの方に知ってもらうことで、
次の世代にもその伝統技術を残すことができるんじゃないかと。
そして、そうやってたくさんの人に広まって買っていただけるようになって生まれたお金は、
次の時代に伝統技術を残していくために、機械の整備などにあてていきます。
だから、「大儲けしてやろう」という気持ちでスタートした訳ではないんですよね。
伝統技術を残していくために、今の時代で言う「クラウドファンディング」みたいな感じでネットショップを運営しています!
S:
自分たちで動いて自分たちで次の世代に残していくための資金調達をする。まさに自立型クラウドファンディングですね!!
青木さん:
そうですね。
あとは、ネットショップだけで販売して、「そこでしか買えない」という付加価値を持たせることで、商品の持つ意味というか価値を高めていこうという想いもあります。
いわゆるブランディングですね。
だからネットショップでは、
デザインから製作まで全て自社で行っているコスモテックオリジナルの商品と前述の意図にご賛同いただいたデザイナーやクリエイターとのこだわりのコラボレーション商品を直接販売していて、卸売はお断りさせていただいています。
お客さんにとっては、コスモテックの商品を購入できる唯一の場所であり、
我々にとっては自分たちの想いがそのまま形にできるというか、自由に伝えられる場所にもなっている気がします!!
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古き良き技術を後世に残そうという想いを、うまく現代の流れにのせて革新をおこしているコスモテックさん。
今度は STORESについてもお聞きしちゃいました!
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「印刷加工所の人間」ということを忘れない
S:
ネットショップの運営など、ちょっと内側の部分もお話しを聞かせてください!
いろんな想いを持ってネットショップを運営されているコスモテックさんですが、ネットショップを作成するサービスがたくさんなる中で、STORESを選んでいただいた理由はありますか?
青木さん:
海外に向けた販売もいつかは行いたいなと思っていたので、英語対応があるサービスだったのと、管理画面がとてもわかりやすい上に、機能がすごく充実していたので決めました。
※コスモテックさんのストアのトップページ。STORESの機能を上手に利用してくださっています!
S:
ありがとうございます!
コスモテックさんは海外のお客様も非常に多いですもんね!ちなみに、ネットショップの運営はどなたが行っているんでしょうか?
青木さん:
私一人で全部やっています。
S:
青木さん全部お一人で?!
青木さん:
はい。
すぐに返信が必要なお問い合わせとか発送は営業時間内に会社で対応しますが、基本的には帰宅後に、家で作業していることが多いですね!
ネットショッップを修正したり、この間までは受注商品を取り扱っていたので、受注確認や、商品の撮影も自宅でやります!
時間にすると2.5〜3時間程度なんですが、そういう作業が好きなので、
あっという間に時間が過ぎますし全く苦じゃないんです笑
S:
商品撮影もご自身でやられているとのことですが、何かこだわりやコツがありますか?
商品写真ってネットショップを運営されている方の一番の悩みでもあるんです。なので、青木さんのコツなどあったらぜひ教えてください!!
青木さん:
コツ…特にない…ですね笑
カメラは自宅にあるデジカメで、白い模造紙を引いてその上に商品を並べて…
ライティングなんかは少し調整したりもしますが、基本的には自宅での作業ですし、凝った設備も持っていません。そこまで大きなこだわりがあるって訳でもないんです。
むしろ、あえて素人感を出してもいいかなと思っているくらいなので…
S:
素人感、ですか?
青木さん:
私たちは印刷に関してはプロだし、もちろん販売商品にも自信を持っています!
でも、写真を撮るプロではないから、そこで素人感や現場感が出てもいいんじゃないかと。
あくまで自分たちは印刷加工所の人間なので、
そっちの方が人間味が出て親近感もあるかな〜と思います。
ネットショップに入れている動画もFacebookでサクっと作れるやつなんですよ笑
だから、強いていうなら、素人感・現場感を残すということがこだわりですかね!
ネットショップは営業マンの勉強の場?!
S:
力を入れすぎす、試行錯誤することを楽しみながらやられているのが伝わってきます!そんな青木さんにお聞きしたいのですが、STORESのいいところってどこだと思いますか?
青木さん:
やはり、「簡単に誰でも店が開ける」というところだと思います!
自分がやってみて思ったんですけど、世の中の営業マンはひとりひとつネットショップを持った方がいいんじゃないかって笑
S:
営業マンですか?
青木さん:
はい!すごく勉強になるんですよ!
ショップの作成から商品が売れるまでの最初から最後までの流れを全部体験できるのってネットショップなんです。
どうしたら売れるのか、今市場で必要とされているものはなんなのか、
そういったことも考えるきっかけになったり、身近に感じられるようになります。
普通の会社だと仕事や担当が分けられているけど、ネットショップは1人で何役もこなしていかなくちゃいけない。
だから、営業マンがネットショップを持つとすごく経験値を積めるな、と思います!
S:
新しい意見をいただきました!これからサラリーマンの方もネットショップを開いてくれると私たちも嬉しいです!
では逆に、STORESへ要望はありますか?
青木さん:
要望ですか…特にこれといったものはないですね。
今のところ、欲しい機能というか、こうしたいと思った通りに出来ているので。
強いて言うとしたら、手数料ですかね??
保坂さん:
手数料がもう少し融通がきくといいなと思いますねぇ。
たくさん商品が売れるほど、手数料5%という部分がどうしてもネックになってくるんです。
私たちもよく使うんですが、売上金額が大きくなるほど手数料が低くなるといったシステムがあると、よりパーフェクトですね!
ぜひ、お願いします笑
S:
ご意見ありがとうございます!
少しでもたくさんのネットショップオーナーさんにご満足いただけるように、私たちもサービスをどんどん改善したり向上に向けて頑張ります!
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とても楽しそうに生き生きとネットショップについてお話をされる青木さんからは、本当に楽しんでネットショップに携わっていらっしゃるんだなという印象を受けました!
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想いを届ける
S:
STORESを選んでいただいた理由の1つに英語対応があったからとのことで、実際に今回の受注商品も海外から購入された方も多かったですよね?
宣伝はどうされているんですか?海外の方へ向けてなど、戦略的に行っているんでしょうか?
青木さん:
ストアの宣伝は大々的にはしていません。
自社で運営しているブログと、InstagramやFacebook、ツイッターなどのSNS更新くらいです!
※コスモテックさんのtwitter。フォロワー数がとても多いですね!
※コスモテックさんのInstagram。もちろんトップにはストアへの動線も付けています!インパクトの多い写真が多いです!
※開設から12年も続いているコスモテックさんのブログ。商品が制作されていく工程など、写真つきで詳しく説明してくれているので、とても読み応えたっぷりです!
S:
ブログやSNSでの宣伝にコツはあるんですか?
青木さん:
アップする時間は多少気にしますけど、基本的にはこうしなくちゃいけないというルールは決めていません。
SNSでの宣伝も、購入してくれた方がツイートしてくださったのをリツイートしたり、コメントを返したりという形で運用しています。
地道に繰り返していたら、「卸販売してくれないか」とSNS経由で希望されるようになってきたり、STORESの競合から連絡をもらったこともありました笑
あとはイベントに出店してみないかというお誘いをいただいたこともありましたし、お客様からSNSを通してお問い合わせをいただくことも多いですね。
ちなみに、今回受注生産した「白夜飛行」のマスキングテープは、SNSを通してお客様からいただいた要望から生まれたんです!!
※上は前回大人気だった夜間飛行。こちらは従業員の方のデザインだそうです。
そして下が今回受注生産にて受付をした白夜飛行。お客様の意見を取り入れた商品だそう。
S:
SNSがお客様との交流の場にもなっているんですね!
保坂さん:
こういったコミュニケーションはとても大切にしていますね。
インターネットって商品が到着するまでやっぱり不安があると思うんです。特に受注生産品は納品までお時間をいただくことになるので。
でもこうやってSNSを通してコミュニケーションを取ったり、コメントに返信をすることで、お客様に少しでも安心感を持っていただけるといいなと思います。
だから、少しでも安心してネットショップを利用してもらうために、SNSだけではなく、私たちもいろいろと工夫をしています。
S:
具体的にどのような工夫をされているんですか?
青木さん:
配送時の梱包なんかは心を込めて行っていますね!
商品の梱包も自分たちで作成した箔押しをつかった梱包資材を使用していますし、作業は必ず従業員が1つずつ丁寧に行っています。
あとは、メッセージカードをつけたりなどもして、少しでも加工所の現場感というか、温かみや我々が想いを込めて作っていることがお客様へ伝わればいいなと思っています。
保坂さん:
想いを込めるって大切だと思うんです。
コスモテックの商品は普通の商品に比べて価格も高いので、お客様は「ちゃんと商品が届くのだろうか」など、本当にドキドキしていると思うんですよね。
だからこそ、メッセージカードを書いたり、おまけをつけたり、梱包にこだわったりすることで、商品が到着した時の安心感を感じてもらえるように工夫しています。
実際に、商品が届いたというSNSの投稿などを見ると、私たちもすごく嬉しいです!
そしてそれを見た他の方にもコスモテックを知っていただいて、箔押しという技術がたくさんの方に広まっていく…
そんな流れが生まれたらいいですね!!
※手前の金色の箔が押されたもの、奥の銀色の箔が押されたもの、これはなんと梱包資材なんです!
「こういうところもこだわりたくなっちゃうんですよ〜コストのことは一度忘れます笑!」と笑顔で話す保坂さんと青木さんがとても印象的でした!
青木さん:
あとは、印刷会社がどうやって商品を作っているのかって、業界に関わったことのない一般の方たちは想像も出来ないと思うんですよね。
実際に商品が届くまで、そういうモヤモヤも楽しんでもらえるといいな〜と思います笑
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かつての日本のような、義理と人情にあふれた、そんなコスモテックさんの雰囲気がたくさんのお客様を引きつける一番のポイントなのかもしれません。
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目標は世界!!
S:
それでは最後に、コスモテックさんの今後の目標を教えてください!
青木さん:
まずはもう少し更新頻度を上げていきたいなと思います!
今、もう売り切れてしまった商品がほとんどなので、今後は3〜4ヶ月に1回程度で新商品を出していきたいなと思います!
そうすることで、お客様の幅も広がってくれたらいいな嬉しいです!
あとはやはり海外へ向けてもっと力を入れていきたいですね!
保坂さん:
ありがたいことに、今、アメリカ・シンガポール・中国・台湾などからはたくさん注目していただいてます。
ヨーロッパも美術に対する想いが熱いので、今後はヨーロッパも視野に入れて商品展開をしていけたらいいなと思います。
また、韓国はツイッターなどでうちの商品が爆発的に広まって話題に登るんですが、なかなか購入まで繋がらないので、そういった国の方にも購入していただけるような商品を出していけるようになりたいですね!
加工所見学
※インクを練って無地のロールに枠を印刷していきます。丁寧にインクを練ることも大切なんだそう。
※練ったインクを機械へ通して、ロールへ実際にプリントしていきます。
※印刷されたものがこちら。次は実際に箔を押す作業に入ります。
※実際に箔をおしていきます。この機械の左側に版と呼ばれる金属板が設置されていて、熱で箔の糊を溶かしながら版で転写していきます。この作業がとても大変なんだそう!1mmでもずれたら全て台無し…箔押しする位置を決定するまでに調整に2〜3時間かかるんだとか!!
ちなみに、このマスキングテープの場合は1つの色・箔につき17万回も版で押すそうです!1つ1つ丁寧に、丹精込めて作られている皆さんの思いが伝わってきました。
スタッフ後記
楽しみながら新しい挑戦を続けていくコスモテックさんの姿は、まるで冒険を続ける少年のようでした。
そして、やはり日本の伝統技術の持つ繊細さ、はかなさ、美しさは世界中の美術に負けるとも劣らないと痛感!!
こうした素晴らしい伝統技術を後世に残していくために、ネットショップというツールがまた別の役割も合わせ持つことに、これからの可能性を感じますね!
ありがとうございました!
コスモテックサンプル直売所
ネットショップURL: https://gyogyogyogyogyo.stores.jp/
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