毎月10,000件のショップがお商売を始めているSTORES.jpには、個性豊かなショップオーナー様がたくさんいらっしゃいます。
今回は、Deng On(デングオン)やWORKER’S BOX(ワーカーズボックス)など個性的なアイテムを生み出すHI MOJIMOJI(ハイ モジモジ)の松岡厚志さんにお話を伺いました。
ビギナーズラックは続かない
ーどうしてHI MOJIMOJIを始めたんですか?
もともとフリーライターとして、企業の広告の仕事をしていました。色んな分野のことを書けて、面白かったんですが、物足りなさを感じることもあって。SNSが流行りだして正直な発信がいいという流れの中、企業の指示でいいところばかりを書くことにしっくりこなくて。
仕事の曲がり角かなと感じていたところで、ちょうどリーマンショックが起きました。企業が外注をしなくなり、いただいてた仕事がほとんどなくなったんです。
食べていけないじゃないですか。どうしようってめっちゃ凹んでたんですが、LIST-IT(リストイット)があったなと思い出しました。今は廃盤になったんですけど、腕に巻いて使うメモで、趣味で作ってデザインフェスタで販売したことがあったんです。
その時にお客さんから「これすごくいいよ、商品化した方がいいよ」と言ってもらえたんですね。初めは工作みたいな商品だったんですけど、あれをちゃんと商品化して売ればいいんじゃないかと思って、会社を作って販売を始めたのがHI MOJIMOJIの始まりです。
ー先に会社を作られたんですね。
そうなんです。ある程度売上がたってから法人化される方も多いと思うんですが、ライター業としての仕事が思わしくなかったので、まずは看板を作って、あいつ面白そうなこと始めたぞと周囲の人に思ってもらえればいいなと。
ーHI MOJIMOJIとしてLIST-ITを販売されてから、今人気のWORKER’S BOXにたどりつくまで、色んな商品を発売されてますよね。
LIST-ITは発売当初、全然売れなかったんです。小売店での販売がスタートしたんですが、宴会グッズのコーナーにあったんですよ。結婚式の二次会とかパーティでのグループ分け用にも使われてはいたんですけど、本来は文具売り場かなと。店舗で取り扱ってもらったもののリピート発注もなくて、全然売れなかったんですよね。
次に販売したのが、Deng Onというキーボードに立てるメモです。
LIST-ITは4色パックやアソートパックで販売していたんですが、動物単体で種類を増やせば、お店でコーナー展開をしてもらえるんじゃないかと思って、動物の種類を増やしました。
狙い通りコーナー展開をしてもらえて、Deng Onの売上が跳ねました。LIST-ITも同じコーナーで販売してもらえて、アソートから単色パックに変更したら、こちらも売上が伸びました。
ーその頃はネットショップで販売されてなかったんですか。
ネットショップもありましたが、売上のほとんどは卸し販売でした。でもネットショップはお客さんの反応がすぐにわかるし、Deng Onの場合はどの動物が人気なのかがわかるので、単純に嬉しいじゃないですか。マーケティングと喜びのためにやってましたね。
その後は、色んな商品を作りましたね。特に2012年は毎月のように新商品を発売していました。でも、一貫性がないんですよ。急に革の名刺ケースを作ったり、帽子の収納ボックスを作ったり…ひとつひとつはそんなに赤字になってないんですけど、トータルで見ると投資の方が上回っていた。
ビギナーズラックでDeng Onの調子がよかっただけなんですが、新しい商品さえ作れば売れるんじゃないかと甘い考えで投資してました。今思うと勢いがありすぎました。
ーそうなんですね…
2014年に妻が妊娠したんです。HI MOJIMOJIは僕が売る担当、彼女が作る担当。作り手がいなくなるからと誰かを雇うのも違う。夫婦でやってるこの色を維持するために、妊娠中をどう乗り切るかを考えて、既存商品のバージョン違いを出しました。
浅はかですよね、その商品がまったく響かず…。現状の販売数からバージョン違いを出した分だけ売上がたつんじゃないか、売り場も維持できるんじゃないかと思ってたんですよね。商品を使ってくれるお客さんのことをまったく考えずに作ってしまいました。
そんな中、2015年にTAGGED MEMO PAD(タグドメモパッド)という耐水のメモを作りました。
これはクリーニングタグを生産している会社さんからの持ち込み企画で、この紙(耐洗紙)を使ってLIST-ITを作りませんかとお声がけいただいたんです。LIST-ITも作ったんですけど、紙が面白かったので、もっと何か一緒にやりませんかと逆にこちらから提案して、4種類くらい商品を作りました。そのうちのひとつがTAGGED MEMO PADで、これがよく売れて、妊娠から子育て初期を乗り切らせてもらいました。
こちらから営業するタイプじゃないんですけど、よく待ちの営業と呼んでいて、魅力さえふりまいておけば来てくれるんじゃないかという考えで。いい商品を作って、いい発信をすることが自分のとっての営業。本当にお声がけくださって、ありがたかったですね。
WORKER'S BOXで本当のお客さんは誰なのかに気付く
それでもちょっとずつ売上が落ち込んでいきました。結構やばい時期があったんですけど、その時期にちょっとした家庭不和がありまして。
大きなデスク1つで、妻と2人で向かい合わせで仕事をしていたんですが、妻が片付けられなくて、デスクが散らかっていました。うちの看板デザイナーさんだし、気分よく仕事をしてほしかったんだけど、僕は散らかっていることがストレスで。
いい加減にしてほしいと訴えたら、確かに片付けられないんだけど、それは理由があると。複数のプロジェクトを同時進行で進めているので、デスクの上に出しておきたい。片付けたい気持ちはあるけど自分にあうグッズがない、色んな整理整頓グッズを試したけど、どれもしっくりこない。一箇所にまとめるだけの箱があればいいのに…と言い始めて「それ、作るわ」と妻が自分で作り始めたんです。
1年くらい、工場の方と打合せしながら試作を重ねているのを見ていたんですが、僕は気持ちが入らなくて。別に普通のクリアファイルでいいやん、て思ってたんですよね。ただ本人がほしいという気持ちを尊重しようと思って、完成するまでは口を出さずに見守っていました。
最終販売形態の1、2バージョン前を見た時に、これは売れるなと思ったんです。商品の生まれた背景を書いて、告知したらすごく反響をもらい、結構売れました。
「散らかってるから片づけて!」
— 松岡厚志 / HI MOJIMOJI (@513MHz) 2017年9月26日
僕の心の叫びから、妻がこんなものを作りました。最初はただの箱かと思ったけど、ほんとに机がきれいになってるし。
ズボラな人でも書類をポイポイ放り込むだけ。これで仕事がはかどる人が増えたらいいなあ。https://t.co/5efDfY1Hl3 pic.twitter.com/pxeUjoCAfs
WORKER'S BOXは生活の延長線上から生まれた商品なんですよね。HI MOJIMOJIは、展示会にあわせて商品を出したり、予算にあわせてということはやっていなくて。その場その場で、こういう商品があったらいいんじゃないかというアイデアベースでやってきました。
ー来年でHI MOJIMOJIを始めて10年になるかと思うのですが、長く続けてきたからこそわかったことってありますか?
僕らにとってのお客さんは店舗ではなくて、店舗のその向こうにいる商品を買って、使ってくださる人だというのは、身にしみてわかりました。店頭で売り場を確保するために、カラーバリエーションや種類を増やすのはお客さんには関係がなくて、本当に良いものなら1種類でいいかもしれない。それをないがしろにしていたなと。
WORKER'S BOXを発売した時に、お客さんが誰なのかがよくわかりましたね。Twitterの投稿をきっかけに購入してくれた方もいたんですが、Facebook経由で友だちが買ってくれたんです。
今までの商品は「面白いね」とは言ってもらえるけど買ってはもらえない。もちろん応援してくれてるんですが、彼らにとって必要なものではなかったんです。WORKER'S BOXは、これは私に必要なものだと思ってくれた友だちがたくさんいて、みんな買ってくれたんです。今までの商品と違う手応えがありましたね。
売りたいものがあるんだったらやらない手はない
ー以前は他のネットショップ作成サービスを利用されていたと思うのですが、なぜSTORES.jpに移行されたんでしょうか。
以前はHTMLでカスタマイズができるサービスを利用していたのですが、コーポレートサイトとネットショップの両方をメンテナンスしていくのは大変だったんです。ネットショップのバナーを凝ったり、見栄えに時間を使うことよりも、商品開発に時間を使いたいなと。
ネットショップはシンプルに販売することに特化して、コーポレートサイトとすみ分けました。結果、このコンテンツはどっちにアップしようかなと迷うことがなくなりました。
ランニングコストが安いこと、AmazonPayが使えることも決め手になりました。
ーありがとうございます。サイトやSNSでストーリーが伝われば、購入には繋がりますよね。
ボタン機能でホームページに購入ボタンがつけられるのもよかったですね。
ーSTORES.jpで気に入ってるところってありますか?
管理画面がわかりやすいところですね。見た目がシンプルでわかりやすい。ちょうど使い始めた時期からサービスのアップデートも加速していって、予約販売機能が増えたのも嬉しかったですね。
サービスのアップデートや手数料の変更など、オーナーファーストな姿勢もいいなと思っています。
ー今後挑戦したいことはありますか。
今後はWORKER'S BOXを中心に販売していく予定なんですが、在庫を持つことは先行投資になるのでどれが売れるかわからない中で在庫を積むのがリスクなんです。
次の商品では、予約販売を利用して、販売数を見込める中で生産数を調整しようと思っています。もちろんお届けまでお待たせしてしまう部分はあるんですが、予約特典として早期割引をするなどで多少メリットをつけて調節すればいいかなと考えています。
ー先に販売数が見込めるのは予約販売のいいところですよね。お商売は大きくしてきたいですか、それとも今のまま長く続けたいですか。
両方できれば一番いいんですが。今、一番大きいのはWORKER'S BOXを存続させていくことですね。WORKER'S BOXは一度使い始めると、継続して使い続ける商品だと思っています。使い始めた方に、販売をやめますとは言えない。
販売を開始してからこれまでの2年間で種類を増やすこともできたんですが、先行投資になるし、種類が増える分リスクも増えますからね。長く続けるために会社を大きくすることが必要ならそうするし、その時々に応じてという感じですね。
ー続けていくことが一番難しいですよね。
ですね。リスクはできるだけ減らしていければと思っています。ひとつの商品に頼っているとそれが傾いた時に、会社も大きく傾いてしまうので、売上を分散して立てられるようにする必要があって。WORKER'S BOXは在庫を持って、リスクも持つパターン。その他に、別の会社さんと組んで在庫を持ってもらうパターン、デザインやアイデアのみを提供するパターンと、分散しています。
リスクがないということはないですが、ライター業で仕事がなくなった時も社会情勢が原因だったので、また同じようなことが起きないようにとは考えています。
ー最後に、これからお商売を始める人へのアドバイスをお願いします。
HI MOJIMOJIの商品は夜中に売れることが多くて、朝起きたら「購入されました」のメールが届いてるんです。こんなに目覚めのいい朝はないですね。商品をほしいと思ってくれる人がいる時点で嬉しいし、お金を出してくれた人がいる、それを朝一番に知る、そんな幸せなサイクルはないですね。
起業のハードルや商売を始めるハードルはほぼない時代だと思うんです。会社勤めしていても勤務時間外や週末にできるし、初期投資もほとんどいらない。売りたいものがあるんだったらやらない手はない。
1通目のメールを受信してほしいですね。あの喜びにかわるものはないです。
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