マーケティングの手法には様々なものがありますが、近年の消費者ニーズの多様化で注目を集めているのが「セグメント分析」と呼ばれる手法です。
これまでのマーケティング手法とは一線を画したマーケティング手法となります。今回はこのセグメント分析について、詳細を解説していきます。
セグメント分析とは
セグメント分析とは、顧客や市場をセグメントごとに分けて分析する手法です。年齢や性別、行動、趣向など特定の属性ごとにセグメントを設定して、詳細な分析を行います。セグメント分析は、現代マーケティングの基本とも言える分析手法です。
これまでのマーケティングの世界では、「マスマーケティング」と呼ばれる手法が使われてきました。マスマーケティングとは、顧客や市場を全体的にとらえて分析する手法です。大量生産・大量消費の時代ではマスマーケティングが有効でしたが、現代は顧客によってニーズは多種多様です。全体的な分析だけでは売上を伸ばすことが難しく、特定の層に合わせた製品・サービス開発が求められています。
現代の多種多様なニーズに応えるために、セグメント分析が有効です。セグメント分析では、特定の属性ごとに分けて分析を行うため、より詳細なニーズを把握することが可能になります。近年はIT技術の発達によって、個人の詳細なデータを集めるのが昔よりも簡単に行えるようになりました。
FacebookやTwitterを利用して、特定のプロフィールに合った広告配信も行えます。加えて、AIの発達も加わって、より客観的で精度の高いセグメント分析が可能になりました。
セグメント分析で使用する項目
セグメント分析では、下記のセグメントに分けて分析を行っていきます。
地理的変数(ジオグラフィック変数)
地理的変数(ジオグラフィック変数)とは、国や都市、地域ごとの経済・人口・文化・宗教・生活などの要素になります。国や都市によって生活環境や文化などは様々です。
たとえば、イスラム教が信仰されている国で、豚を使った食品を販売しても売れませんし、高齢化が進んでいる都市でファーストフードチェーンは流行りづらいです。
国や地域の特徴にあった製品・サービスを提供するために、地理的変数による要素分けが必要となります。
人口動態変数(デモグラフィック変数)
人工動態変数(デモグラフィック変数)とは、個人の性別・年齢・職業・家族構成などの要素になります。こちらの変数は、顧客の行動・趣向と直結しやすい変数です。
近年の顧客ニーズの多様化に合わせて、人口動態変数の詳細なセグメント分けが実施されるようになりました。
たとえば、男性向け化粧品の広告をSNSで発信する際、年齢のみならず、職業や結婚の有無など、より細かいセグメントに分けてターゲットを絞っていきます。
心理的変数(サイコグラフィック変数)
心理的変数とは、趣向や生活スタイル、価値観、宗教観など個々人の心理的な要素になります。近年のニーズの多様化は、心理的変数の多様化と言っても過言でありません。個人の考え方・感性の多様化が、様々な価値観を生み出しています。
これまでのセグメント分析では、心理的変数の詳細な把握は難しかったのですが、IT技術の発展によって、心理的変数のデータを集めやすくなりました。
主に市場調査やアンケートによって心理的変数のセグメント分析を実施していきます。
行動変数
行動変数とは、消費者の購買状況・経路・頻度や購入した曜日・時間帯など、直接的な購買行動に関する要素になります。消費者の購買行動にどのような特徴があるか分析したいときに、行動変数のセグメント分けを行っていきます。
たとえば、書籍をインターネット経由で購入する消費者の場合、どの分野の書籍をよく購入するのか、また購入する時間帯(朝なのか、夜なのか)・曜日などを分析します。夜の時間帯にビジネス書籍の購入が多い場合は、その時間帯に合わせてビジネス関連の書籍を販売サイトのトップページに表示させれば、売上アップが見込めます。
セグメント分析では「ターゲット」を明確にする
セグメント分析で重要なのが、「何を(誰を)ターゲットにするか」という点です。ターゲットを決めずに、漠然とセグメント分析を実施しても右往左往してしまいます。たとえば、カクテルタイプのお酒を販売することになった場合、そのお酒をどの層に向けて販売していくのか、決めていく必要があります。
セグメントに分けて「女性×20代×内向的」なタイプをターゲットにするならば、アルコール度数は低めで、甘いタイプのカクテルが向いていると考えられます。また「男性×30代×管理職」の顧客に向けて販売するならば、甘さは控え目で、アルコール度数は高い方が良いと分析できます。
ただし、最終的な根拠は市場調査・アンケートで裏を取ることが必要です。調査の結果、30代の男性でも「甘めのカクテルを好む」ことが判明するかもしれません。また、消費者の具体的な行動パターンや心理的要素によって、好むカクテルの種類が変わってくる可能性もあります。現代の消費者ニーズは目まぐるしく変わるので、データで裏を取っておくことは非常に重要です。
主観的な情報や印象に囚われずに、客観的なデータに基づいてターゲットを絞っていくことが肝要になります。セグメント分析を行う際は、市場調査やアンケートにかかる時間を考慮して、計画を練るようにしてください。
セグメント分析の活用事例
セグメント分析を活用した成功事例として、パナソニックのノートパソコン「レッツノート」の事例が挙げられます。パナソニックは今でこそ、ノートパソコン業界の大手となっていますが、2006年以前はパソコン事業からの徹底を検討するほど、事業不振に陥っていました。
1990年代の終わりごろまでは、ノートパソコンは主にビジネス向けのものでしたが、インターネットの普及にともない、徐々に一般人の生活用パソコンのニーズが拡大していきます。パナソニックは主にビジネス向けのパソコンを販売していたため、日常生活用のノートパソコン販売では後発となってしまいました。生活者向けのノートパソコンを販売したものの、流れに乗ることができず失敗に終わります。
このとき、パナソニックは売上回復のためにセグメント分析を実施して、ノートパソコンの販売を「法人向けでかつ、外回りの営業担当が利用できるノートパソコン」という分野に絞る方針を打ち出します。外回りの営業で利用しやすいように、パソコン本体の「薄さ」と「長時間バッテリー」、「耐久性」にこだわったノートパソコンの開発に着手します。
この結果生まれたのが「レッツノート」です。レッツノートは軽量ながらも頑丈で、高スペックをもったノートパソコンとして大ヒットします。その後、レッツノートは評判を呼び、外回りの営業担当者以外の層にも広がっていきます。
パナソニックの事例は、セグメント分析が成功した顕著な例ですが、このようにターゲットを明確にすることで、他社との差別化を図り、競争に勝つことが可能になるのです。
まとめ:セグメント分析を利用して、効率的に売上を伸ばす
セグメント分析を行うことで、消費者のニーズやターゲットを詳細に分析・設定することが可能になります。これまで行われてきたマスマーケティングでは、現代の多様化した消費者ニーズを捉え切るのが難しいです。セグメント分析を実施すれば、マスマーケティングで扱え切れなかった詳細な階層設定ができます。
セグメントは地理的変数や人口動態変数など、計4つのセグメントに大別できます。データ収集技術と合わせて活用することで、精度の高いマーケティングを実現することが可能です。パナソニックなど、有名大手企業もセグメント分析を活用して、売上アップを達成しています。
個人店や中小企業でも、セグメント分析を利用することで、競合他社と差別化できますね。セグメント分析をマーケティングに取り入れて、より効率的なマーケティングを行っていきましょう。
参考:
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