店舗の運営をしているけれど、売上に伸び悩んでいる経営者の方も少なくありません。運営を見直す方法として挙げられるのが来店者の分析です。
最近では来店者の数を計測する技術も浸透しつつあり、分析が行いやすい環境が整っています。今回は来店者分析のメリットをはじめ、指標や方法、役立つサービスなどを紹介します。
来店者を分析するメリット
来店者の分析をする必要性に疑問を感じている方もいるかもしれません。まずは、来店者を分析するメリットを2つご説明します。
メリット1.改善点を把握できる
商品を仕入れても、なかなか購入してもらえず在庫が余ってしまうことも少なくありません。その場合、来店者が商品を購入してくれない理由を知る必要がありますが、売れ残った商品を見ているだけでは理由が見えてこないでしょう。
その点、来店者の購買傾向を数値として視覚化できれば、店舗として販売について改善すべきポイントを確認しやすくなるといえます。また、分析によって導いた改善策に成果が出ているのか、数値的に確認することも可能です。
メリット2.店舗運営を円滑にできる
長年の経験や勘を頼りに来店客数を把握している方もいるかもしれませんが、必ずしも正確とは言い切れないでしょう。たとえば来店者の数を分析することで、来店者が増える時間帯、曜日、季節などがわかります。
混雑する時間帯を事前に把握しておくことで、スタッフの配置を柔軟に行うことができ、来店者に対応しきれないという事態を防ぐことができるでしょう。
また、ピークでない時間帯に従業員を休憩させやすくなり、労働環境の改善にもつながると考えられます。
来店者数の分析に関するカウント方法
来店者分析の指標として来店者の数が思い浮かぶことでしょう。ただ、来店者を分析する前に、そもそも来店者数はどのように把握すればよいのでしょうか。当然目視でカウントする方法も考えられますが、大規模な店舗では限界があるといえます。
その点、来店者の数を計測する方法としてセンサーの設置があげられます。店舗の出入り口付近の天井に設置するだけで機械に24時間計測をしてもらうことが可能です。
赤外線や超音波、熱感知、レーザーなど検知の方法はさまざまであり、当然人間が目視で確認するときに発生するヒューマンエラーの心配がありません。
機器の購入や工事などに関する導入コストはかかりますが、一度配置すれば人的コストがかからないというメリットがあります。
最近は技術が発展し、AIによる画像・映像解析にもとづいて来店者数をカウントしてくれるカメラも登場しています。人数だけでなく性別や年齢なども判定してくれる機器もあり、導入すれば来店者に関する分析方法の幅を広げることができるでしょう。
また、監視カメラとしての役割も期待できるので、分析用としてだけでなく防犯対策としても導入しやすいといえます。来店者数のカウント方法に迷っている場合は、計測機器の導入について一度検討してみるとよいでしょう。
来店者分析の指標
来店者の分析は、単に店舗を訪れた人数だけが分析の対象ではありません。来店者に関する具体的な分析の指標をいくつか見てみましょう。
指標1.購買率
購買率は来店者に対する購入客の割合です。来店者数が多くても結果として購入に至らなければ売り上げにはつながらないため、来店者数よりも重視すべき指標だといえます。店内のレイアウトやスタッフの販売力がダイレクトに反映されます。
指標2.キャプチャーレート
店舗の前を通行した人数のうち店舗に入った人数の割合です。つまり、通行人の捕獲率といってもよいでしょう。捕獲率が高ければ来店者数が高いことを意味します。
指標3.顧客経路
顧客が通る経路を分析することで、混み合う通路がわかります。混雑を回避する店内構造にすることで来店者のストレスを減らすだけでなく、スムーズな販売につながると考えられます。
指標4.滞在時間
滞在時間は来店客が店舗で過ごした時間です。一般的に店舗にいる時間が長いほど購買につながる傾向があると知られています。
指標5.年齢や性別
魅力的な商品でもターゲットを誤れば購買にはつながらないでしょう。来店者の年齢や性別などの情報を把握することで、販売すべき製品を最適化することも可能です。
来店者の分析方法
来店者の分析が重要だとわかっても、どのように分析すればよいかわからない方もいるかもしれません。参考として、来店者の分析を行う際に役立つフレームワークについて概要を紹介します。必要に応じて活用してみるとよいでしょう。
分析方法1.セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、来客群の特徴から類似性を見出して分類・分析する方法です。個人の場合であれば年齢や性別、家族構成など、法人の場合であれば業界や業種、企業の所在地などが着目できるポイントでしょう。
分析方法2.4C分析
4C分析は、顧客の価値(Customer Value)、顧客が費やすコスト(Customer Cost)、顧客の利便性(Convenience)、顧客とのコミュニケーション(Communication)の観点から来店者を分析する方法です。いずれも顧客の視点に基づく観点であり、来店者の目線で店舗運営を見直す際に役立つ分析方法だといえます。
分析方法3.RFM分析
RFM分析は、最新購買日(Recency)、購買頻度(Frequency)、累計購買金額(Monetary)の観点から来店者を分析する方法です。来店者をランク付けすることで店舗がアプローチすべき対象を判別するのに役立つといえます。
来店者の分析サービス
来店者分析の具体的なサービスについて知りたいと思った方もいるかもしれません。ここからは大手企業が提供する来店者の分析サービスを紹介します。
サービス1.Panasonic
大手家電メーカーのPanasonicはVieurekaプラットフォームによる店舗向けの来客分析サービスを提供しています。Panasonicが培ってきた画像認識技術を活かし、カメラからクラウドに送られたデータをもとに来店客の人数や性別、年齢、滞在時間などを集計・分析してくれます。
データについてはCSV形式で出力でき、ほかのデータと組み合わせて分析の幅を広げることも可能です。
サービス2.SoftBank
大手電気通信事業者のSoftBankは、店舗におけるWi-Fiスポットの接続情報をもとに顧客属性を可視化するサービスを提供しています。
月別、曜日別、時間別などの来店者情報をグラフ化できるだけでなく、性別や年代、住居の情報まで分析できます。店舗の商圏内で行動する人々の属性を視覚化することで、今まで取り込めなかった顧客層にアプローチできるようになります。
サービスを利用するにはInternet Plusのアクセス回線とソフトバンク提供のWi-Fi機器の導入が必要です。
来店者の分析を活かす方法まとめ
以上、来店者を分析するメリットをはじめ、来店者のカウント方法や分析に役立つフレームワーク・サービスなどを解説しました。ただ、来店者の分析を行っても分析結果を活かさなければ本末転倒です。
来客数自体が少ないのであれば店舗の認知度が低いのかもしれません。WEBサイトを開設してターゲットに信頼感を与えたり、TwitterやFacebookなどのSNSを活用して店舗の情報を広めたりするとよいでしょう。
また、店舗を通りかかっている人が多いのに来店につながらないケースもあります。その場合は通行人に来店する動機を与えられていない可能性があるので、看板の利用を検討するとよいかもしれません。
近年ではデジタルサイネージという電子看板や電子公告が浸透しつつあります。静止画だけでなく動画の再生も可能であり、より多くの情報を認知してもらえます。来店者数に伸び悩んでいるのであれば必要に応じて導入を検討してみてはいかがでしょうか。