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「長くゆっくり、我が子のように迎えて欲しい」十月十日の システムで漆器を届ける「めぐる」<後編>

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毎月10,000件のショップがお商売を始めているSTORESには、個性豊かなショップオーナー様がたくさんいらっしゃいます。

 

“適量生産・適速生産”を目指した「十月十日(とつきとおか)」のシステムで漆器「めぐる」を展開する漆とロック株式会社の貝沼さんへのインタビュー後編です。年1回の予約生産制やお客さまとのコミュニケーションについてお伺いしました。

 

十月十日(とつきとおか)をかけて届ける漆器

ー今年から「めぐる」は新しい仕組みに挑戦されていますよね?

 

はい、「めぐる」は季節のサイクルに則したものづくりを目指すため、今年から思い切って年1回だけの受注期間を設けての予約生産制としました。

 

受注は毎年、12月15日〜3月15日の三ヶ月間のみです。器はおおよそ十月十日(とつきとおか)をかけてお届けします。お待ちいただく期間は、毎月メールやお葉書などでご自身の器が育つ様子をお知らせしていますので、我が子を迎え入れるように、器のマタニティタイムをお過ごしいただければと考えています。

 

ーそれはユニークですね。運営されている立場としては、どのような効果を感じていますか?

 

1年で3ヶ月だけしか受注期間がないというのは特殊な届け方だと思いますが、販売期間と製作期間が分かれているのはやりやすいんです。受注期間は知っていただく機会を増やすことに集中し、製作期間は工程や素材、産地の季節の話を伝え続けることに力を入れる。季節に合わせて自分の役割も変わっていくので面白いなと。まだ1周目でやり始めたばかりですが、そう感じています。

 

ー受注期間の3ヶ月間はどのように過ごすんですか?

 

とにかく毎週、全国の色々なところでイベントや受注会を開催しながら、ネットで情報発信もして、という感じです。イベントでもご注文をいただける場合もあるのですが、後からオンラインでお申し込みされる方が多いです。ご家族がいらっしゃる方は、自分のためだけではなく、旦那さまや奥さま相談してセットでお申し込みされる方が多いです。

 

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ーやはり、直接お話を伺ったり、体験されてから購入する方が多いのでしょうか?

 

そうですね、それが一番多いのですが、雑誌の記事やホームページを見ていただいたり、以前めぐるをお迎えいただいた方のご紹介でご購入いただく場合もあります。

 

あとは、SNSも大切だと思います。Facebook、Instagram、Twitterを活用していますが、「めぐる」の商品はFacebookでの拡散性が一番高いです。商品のストーリーが魅力のひとつなので、ある程度長文の言葉や説明と一緒に拡散されるFacebookが向いているんだと思います。

 

消費者と生産者という分断された存在ではない

ー色んなネットショップ作成サービスがある中で、なぜSTORESを選ばれたんでしょうか?

 

いくつかのサービスがあると思うのですが、比較サイトなども見て、決済方法の多さや手数料、ストアデザインのカスタマイズ性や全体の雰囲気が良かったのでSTORESにしました。

 

ー「めぐる」オンラインストアでは、予約販売機能を活用いただいていますが、予約販売で売ることのメリットは何だと思いますか?

 

私たちにとって一番大きなメリットは、やはりモノが生まれるまでの背景を時間と共に伝えられることです。年1回の循環で作るから、季節の情景と共に「あなたの器」は今こういう状態まで進んでいますよときちんと伝えることが出来ます。

 

十月十日のスタイルにする時に、プロジェクトメンバーでも話し合って、さすがに年2回にした方がいいのではという議論もあったのですが、最後は年1回に決めました。季節は年に1回巡るんだから、それに合わせようと。そのベースには、noteに書いた“適量生産・適速生産”という考え方があります。

 

 

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ーそうだったんですね。
予約販売にすることで、生産量が決まり、事前に入金されますが、それにもメリットを感じますか?

 

最初にお金をいただく責任はとても大きいと感じています。何よりきちんとお届けするまでの責任があります。ただ、質の高いものを適切な時間をかけて作ろうとしたら、このシステムでないと実現できないことがあるんです。

 

「めぐる」でいうと、漆器作りというのは本当は2年がかりなんです。製作自体に約1年かかりますが、その前の1年で材料になるトチノキや漆を確保して寝かすという準備をしておかないといけない。しかも、そのような良質な国産の自然素材というのは、年々希少になってきています。

 

そこまで覚悟したものづくりに立つと、数年先の材料も見越して確保しておかなければいけません。一つには、そういう理由でも、この仕組みが必要なんです。ですので、例えば「みなさんのおかげで来年用のこのような木材が確保できました」という情報もお伝えするようにしています。それって、ペイフォワードのように、年をまたいで、お使いいただく方同士の中で素材がバトンタッチしていくんですよね。それもなんだか素敵なことだなと感じています。

 

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ーそう聞くと、お客様も商品を買うことで漆器の文化全体に貢献していると感じられますね。

 

この器を迎えてくださった方も私たちも、みんなで仲間のような存在になれたらいいなと思っています。消費者と生産者という分断された存在ではなく、同じ大きな循環の仲間として。自然相手のものづくりは、時に課題や困難さもありますが、それを一緒に乗り越えて、お互いの声を聞き合って、一緒に広めていく。文化はそうやって作られていくのかなと思います。

 

漆器で時間を拡張したい

ー理想的なブランドのあり方だと感じました。
今後なりたい姿や未来像について教えてください。

 

大きい話になっちゃうんですが、漆器を通じて「時間を拡張したい」と思っています。

 

価値の測り方、価値の時間単位が、現代社会ではどんどん短くなっていると感じます。それこそ、自然に即した暮らしをしている山の仕事を見ていると、見ているサイクルが数十年じゃきかなくて、数百年単位なんですね。山が循環していく中で、今自分がどうするかを考えている。

 

よくインディアンは7代先を考えて生きていると言われますが、そういう中に生きることの本質があるんじゃないかなと思っています。自分がそういう大きな存在の中のひとつと捉えられると、すごく楽にもなるし、安心しませんか。

 

それが現代社会って、どんどん忙しくなって、この1ヶ月をどう稼ぐか、どう生きるかみたいになっている。もう少し価値の測り方、生き方を長い時間の中で、生きていけるようになったら、もっとバランスが取り戻せるんじゃないかなって思っていて。

 

漆器ってそういうことを教えてくれるし、そういう暮らしに自然になっていく力を持っていると思います。「めぐる」は商品を頼んでから、十月十日、我が子を迎えるように商品が届くのですが、現代社会だと普通ありえないですよね。クリックしたら次の日になんでも届く、そういう社会ですから。でも、だからこそ、長くゆっくりモノができる時間を待つ、間(ま)ですね。ミヒャエル・エンデの『モモ』の時間泥棒の話じゃないですが、「めぐる」は現代に「間」を取り戻す小さな実装のひとつでもあると考えています。

 

こういうことって、これからの社会で大事だなと思うんですが、STORESの仕組みもそうですが、テクノロジーの力があるからこそ、むしろやりやすくなっています。WEBの力って伝える力だと思うので、それもうまく活用しながら、世界に「間」を取り戻す、それができたらいいなと思っています。

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漆は15年育てたウルシの木の樹液を大切にいただく

ー最後に、これからお商売を始める方にアドバイスをいただけますか?

 

5年間「めぐる」をやってきた感覚としては、お客さんはちゃんと見ていらっしゃるんですよね。メールの返信の書き方、お問合せの電話対応ひとつで、不安でお問い合わせいただいたり、何かしらのトラブルの場合でも、きちんと受け応えすることで繋がりが強くなります。ひとつひとつの積み重ねでしかないと、日々勉強しながら思います。

 

私も本当に日々お客様から教えていただいていますが、メールひとつでも書き方次第で対面と同じくらい繋がることができると感じています。「めぐる」は器の塗り直しや修理も随時お受けしていますが、ご愛用いただいた器をお直ししてお送りすると、本当に喜んでくださいます。オンラインストアから始まったご縁が、こうして長く続いていくのが私たちも本当に嬉しいですし、それがブランド名に込めたねがいでもあります。

 

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※現在「めぐる」では、お猪口やお皿などの新作も随時仲間入りしています。すぐにご購入いただけるものもありますので、是非下記のオンラインストアをご覧ください。

meguru.stores.jp

 

文:ストアーズ・ドット・ジェーピー広報 加藤千穂
写真:漆とロック株式会社提供

 

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