ネットショップを運営していくためには、利益率の計算は不可欠です。
「利益率という言葉の意味は何となくわかる」という方もいるかもしれませんが、ショップを運営していくとなると話は別。安定してショップを運営していくには、利益率の正しい計算方法を知っておく必要があります。
この記事では、ネットショップ運営で欠かせない利益率の計算方法と、利益率を上げる5つの方法についてご紹介します。
ネットショップの利益率とは?
最初に、ネットショップの利益率とは具体的にどんなものなのか、解説していきます。
ネットショップの利益率の重要性
利益に関する用語には利益率と粗利益率があり、利益率は費用(販売費および一般管理費)を差し引いたもの、粗利益率は費用を差し引いていないものを指します。
一般的に利益率と言えば粗利益率を指しています。この記事でも、「粗利益率」を利益率としてご説明します。
利益率を知ることで、現在のショップの経営状態や、コストがかかりすぎていないかどうかといった収益性が把握できます。そのため、利益率はショップの運営がうまくいっているのかどうかを判断する重要な数値です。
一般的には、利益率が高いほど収益性も優れているといえるでしょう。ただし、分野や業種によって利益率の平均値に違いが見られるため、数値だけでは決められない部分もあります。
ネットショップの利益率の計算方法
ネットショップの利益率は次の計算式によって求められます。
利益率(粗利益率)=売上総利益÷売上高×100
あるいは、
利益率(粗利益率)=(売上高-売上原価)÷売上高×100
売上原価とは、売れた商品の仕入れや製造にかかった費用のことです。ネットショップの場合、売上原価として計上される内訳は、商品原価、送料、広告費などが挙げられます。
ネットショップの利益率が高くても赤字になる!?
ネットショップの場合、利益率が高くても赤字になることがあります。利益率の計算式では、売上金額に関係なく発生する固定費や借入金の返済は含まれていないからです。
固定費には、家賃や人件費(個人事業主の場合は生活費も含む)、水道光熱費、交通費、交際費などが挙げられます。これらは売上の増減に関わらず発生する費用です。また、ショップのオープン費用を借り入れている場合、利息分も含めた返済費用も必要になります。
利益率の計算式にはこれらの費用が含まれていないため、利益率が高くても、実際は赤字経営となる場合もあるのです。
このような点にも配慮したうえで利益率の目標を定めることは、販売価格を決めるためにも、とても大切な作業です。
利益率を使い、仕入れ価格から販売価格を決める具体的な方法については、『商品の値段の付け方とは?〜仕入れ価格から販売価格を決める〜』で詳しく解説しています。こちらもぜひチェックしてみてください。
ネットショップの利益率の平均は?
ネットショップを安定して運営していくためのキーポイントになる利益率ですが、平均値はどのくらいなのでしょうか?
前提: 利益率は商品によって大きく異なる
扱っている商品によって利益率は変わります。
利益率が高い商品の代表は、自分で作ったハンドメイド雑貨商品。自作なので制作費を抑えられますし、値段設定も自由にできるため、利益率は高くなりやすいです。
逆に利益率が低い商品としては、家電製品やブランドコスメなどが挙げられます。
5%以下がざらにあるジャンルと、50%以上にもなるジャンルがある
基本的に中間業者を必要とせず、自分で制作するハンドメイド雑貨の場合、50%以上の利益率になることも珍しくありません。
逆に、電化製品の場合は、売上店ランキングで上位のショップの場合でも、5%以下となるケースも多いようです。
このように扱う商品によって利益率はかなり異なるため、目安を知りたい場合は、同業他社の利益率を調べてみることをおすすめします。
ネットショップの利益率をあげる5つの方法
扱う商品によって大きく異なるネットショップの利益率。そこで今度は、ネットショップの利益率を上げる5つの方法をご説明します!
商品単価を上げて売上原価を下げる
利益率を上げる最もシンプルな方法は「安く仕入れて高く売る」を実践することです。具体的には、
- 商品単価を上げる
- 売上原価を下げる
という2つのステップを指します。高単価で、なおかつ原価が安い商品を販売できれば、利益率はアップします。
商品単価を上げるには、付加価値の高い商品を用意する必要があります。
特に、競合ショップが多いジャンルの商品を扱う場合は、「アフターサービスの充実」「ショップ独自の商品活用マニュアルを用意する」といった付加価値をプラスして高価格で販売しましょう。売上原価を変えないまま高価格で販売できるので、利益率が大きくアップします。
まとめ売りの商品を作る
利益率が高い商品とあまり高くない商品をセットにするまとめ売りも、利益率アップに効果的です。
ポイントは、「一緒に使用すると便利」「使用用途がさらに広がる」といった関連商品をセットにすることです。まったく関係のない商品をセットにしても、お客さまは欲しいとは思いません。
まとめ売りする商品に悩んだときは、お客さまにとってメリットになる商品を選ぶのがコツ。そうすることによって結果的にお客さまに感謝され、ショップをリピート利用してもらいやすくなります。
目玉になる定番商品と、おすすめのこだわり商品をパッケージにするのもおすすめです。単体で売れ行きの悪い商品も売れるようになりますし、その商品の良さを知ってもらう機会にもなります。
客単価を上げる
客単価(お客さまが一度の買い物で支払う金額のこと)を上げることも、利益率の改善に効果的です。具体的な方法としては、以下の5つが挙げられます。
クロスセル
クロスセルとは、お客さまが商品購入を決めたときに関連する商品を一緒に提案する方法のこと。たとえば、ファストフード店で商品をオーダーしたとき、「ご一緒に〇〇〇はいかがですか?」と言われた経験のある人は多いでしょう。
また、アマゾンなどの大手ネットショップで買い物をしたとき、「こちらの商品もいかがでしょうか?」あるいは「この商品を購入した人は、こんな商品にも興味を持っています」と表示される場合があります。これらも、クロスセルのひとつです。
アップセル
アップセルとは、ある商品の購入を考えているお客さまに、さらに上位の商品を提案する方法のことです。
たとえばインターネットでは、商品申し込みのエントリーフォームで、より高額の商品・サービスのオファーを提示する方法がよく採用されます。あのような売り方がアップセルの典型例と言えるでしょう。
また、アップセルは多くの人が「失敗したくない!」と考える商品、たとえば分譲マンションや貴金属など高額商品の販売でも頻繁に用いられています。
送料無料
大手のネットショップでは、「〇〇円以上購入で送料無料!」となっているケースも多くあります。とはいえ、送料無料の金額設定が小さいと、中小のネットショップでは逆に赤字になってしまう可能性も…。
その場合は、メインの商品2個分以上の価格を送料無料の最低条件にしておくのがおすすめです(2,000円の商品が多いなら4,000円以上で送料無料にするなど)。
普段からよく使う商品であれば「送料を無料にするために2個買っておこう」というお客さまの行動も期待でき、結果的には利益率アップにつながる可能性があります。
ギフト商品
季節需要のあるギフト商品、たとえばバレンタインデー、母の日、父の日、敬老の日などにピッタリの商品は、ネットショップでは特に売れやすい傾向にあります。
ギフト商品の場合、人にプレゼントするものなので、基本的にはある程度の金額がする商品を購入するお客さまが多いはずです。そのような背景もあって、高価格の商品が売れやすいと言えます。
松竹梅の法則
松竹梅の法則とは、商品ひとつの需要に対して、3つ(松・竹・梅)の価格帯の商品を用意しておく方法です。前述したギフト商品の販売でもよく見られる方法です。
特に、松竹梅3つの真ん中である「竹」の商品を選ぶお客さまが多い傾向にあります。また、非常に稀ではありますが、もっとも高額な「松」ランクの商品を選ぶお客さまが見られるのも、この法則の特徴です。
リピーターを増やし広告費削減
ショップのリピーターが多くなると、広告費用の削減が期待でき、結果的には利益率アップにつながります。新規顧客を獲得したい場合、広告費にかなりの金額を投じる必要があるからです。
リピーターを作るために欠かせないのは、以下のような施策です。積極的に実行して、商品やショップのファンになってもらいましょう。
- 購入後にお礼メールを送る
- お得な情報が掲載されたメルマガやDMの発行
- リピーター購入特典を付ける
- 定期的に新商品を出す
リピーターの獲得はネットショップの成功に大きく関わります。リピーターがいなければ、ずっと新規のお客さまを集めなければいけませんが、新規集客はたくさんのコストや労力がかかります。それに対して、リピーターの獲得・維持にかかるコストや労力は比較的小さいです。
商品原価を下げる
商品原価を下げれば粗利率はアップします。たとえば、売値5,000円の商品を20個仕入れたとします。原価2,500円で仕入れた場合と、原価4,000円で仕入れた場合を比較してみましょう。
【原価2,500円で仕入れて5個売れ残った場合】
・売上合計=75,000円(5,000×15)
・仕入れた商品の原価合計=50,000円
・粗利=25,000円(75,000-50,000)
【原価4,000円で仕入れて1個売れ残った場合】
・売上合計=95,000円(5,000×19)
・仕入れた商品の原価合計=80,000円
・粗利=15,000円(95,000-80,000)
どうでしょうか。原価2,500円の場合は5個売れ残ったとしても、25,000円の粗利が残ります。一方で、原価4,000円の場合は1個しか売れ残りがなかったとしても、15,000円の粗利しか残りません。10,000円の差が出てきます。これが、商品原価を下げることの重要性です。
商品原価を下げるためにできることを以下に軽くまとめたので、参考にしてみてください。
商品原価を下げるためのアイデア |
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まとめ
ネットショップの利益率は安定した経営には欠かせない、指針とも言える数値です。
ネットショップの場合、売上高が高くても、実際のところそれほど儲かっていないケースもよく見られます。また、利益率は扱う商品のジャンルによって、大きく異なるのも特徴です。
そのため、自分のショップの利益率を客観的に判断するためには、同業他社を調べて目安を知るのが一番!利益率をアップさせるために、こちらでご紹介した5つの方法をぜひ試してみてくださいね。
なお、ネットショップの開業については、『2021年最新版】ネットショップ開業・開設手順はこれを見れば完璧!初心者〜上級者向けにご紹介』で詳しく解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。