近年、多くの業種に『フランチャイズ』という形態が浸透しています。初めて経営に携わる人でも成功しやすいものの、向き・不向きがある点には注意しましょう。
フランチャイズの仕組みから向いている人、成功につなげるポイントまで解説します。
- フランチャイズの基礎知識
- フランチャイズには向き・不向きがある
- フランチャイズ開業を成功に導くポイント
- 成功しやすいとされる業種3選
- フランチャイズへ加盟する前の確認ポイント
- しっかり勉強してフランチャイズ開業を
フランチャイズの基礎知識
フランチャイズとは、本部企業に対してロイヤルティを支払うビジネスの形態です。本部のブランド力や、ノウハウをそのまま使えるメリットが注目されています。
フランチャイズがどのような仕組みで機能しているのか、ロイヤルティとは具体的に何のために払うのかを見ていきましょう。
フランチャイズの仕組み
加盟するビジネスオーナーが本部(フランチャイザー)にロイヤルティという料金を支払うことで、お店やサービスの運営に必要なノウハウ・設備などを活用できるのがフランチャイズです。
商標を利用できるだけでなく、本部がこれまでに培ってきたやり方も踏襲できます。一から個人で事業を立ち上げるよりも、スタート時点から集客しやすいでしょう。
本部とフランチャイズ契約を結んだ加盟店(フランチャイジー)は、事業運営に必要なさまざまな権利を得られます。その対価として、契約のための加盟金に加えて、毎月の売上から一部をロイヤルティを本部に支払うのです。
本部に支払うロイヤルティの意味
加盟店が本部に支払うロイヤルティは、本部から提供されるノウハウやネームバリューなどの対価と位置づけられています。
ロイヤルティには、さまざまな支払い方があります。以下の三つは代表的な方式です。
- 売上に対して一定の割合をかけた金額を支払う『売上歩合方式』
- 粗利益に対して一定の割合をかける『粗利分配方式』
- 売上金額にかかわらず毎月決まった金額を支払う『定額方式』
売上や粗利益に応じて金額が動く方式では、業種によってロイヤルティの割合が変わってきます。例えば飲食店では売上の3~10%程度ですが、コンビニの場合は30~60%と高めに設定されています。加盟契約を交わす前に確認しておきましょう。
儲かるかどうかはやり方次第
フランチャイズで開業すれば、すでに成功しているビジネスモデルをそのまま踏襲できます。起業家が一からビジネスを始めるよりも、成功しやすいと思うかもしれません。
しかし、どのような状況でも必ず成功できるわけではなく、儲かるかどうかは加盟店のやり方次第です。
業界によっても事業継続のしやすさは変わってくるので、できるだけ儲かりやすいジャンルを選びましょう。
ただし、コンビニのように相応のニーズが見込める業界はロイヤルティも高く設定される傾向にあります。市場の成長率や参入のしやすさで選んでも、ロイヤルティが高くて儲からない可能性も考えて業種を選ばなければなりません。
フランチャイズには向き・不向きがある
すでに確立されているビジネスモデルを使って事業を行うフランチャイズには、人によって向き・不向きがあります。
加盟店の運営に向いているかどうか、しっかりと自己分析をしておきましょう。人によっては、自らビジネスを始める方が成功しやすい場合もあります。
既存の枠組みを活用できる人に向く
すでに用意されたブランド力やノウハウを活用して、地道に事業を継続できる人はフランチャイズに向いているといえるでしょう。
フランチャイズでは本部の決めたやり方の範囲で動く必要があり、取り扱う商品やサービスも決まっているのが通常です。
枠組みの中で自分の仕事をやり遂げられるのであれば、フランチャイズのメリットを生かしやすいといえます。
逆に、提供する商品・サービスやターゲット顧客の選定、ビジネスモデルから作り上げたい人には向きません。既存の枠組みが息苦しく感じてしまい、運営に不満を覚えるでしょう。
さらに、フランチャイズでは本部からの指示に従わなければならないケースも多々あります。さまざまな制約の中で細かい工夫をしながら、事業を運営できる人にはおすすめの形態です。
自発性に欠けていると難しい
フランチャイズでは本部からの指示に従いながら、事業を運営しなければいけません。とはいえ、自分のビジネスとして事業や店舗をマネジメントする姿勢も求められます。
具体的な商品構成をどうするか・どのような方針で人材を育成するかなど、加盟店が自らの裁量で決めなければならない点は多いものです。
本部からある程度のサポートは受けられるといっても、それに依存してしまい自発的に動けない人には難しいでしょう。
事業の骨格部分は本部のモデルを踏襲するものの、お店や事業をどう育てていくかは加盟者が考えなければいけません。
フランチャイズ開業を成功に導くポイント
フランチャイズでの開業は、事業主の努力次第で成否が決まります。成功につなげるには、どのような心掛けや行動が必要なのでしょうか?
ゴールを明確にして始める
たんに『儲かりそうだから』という理由で、安易にフランチャイズに加盟する人も少なくないようです。しかし、フランチャイズに限らず、事業を成功に導くには明確なゴール設定が欠かせません。
何のための事業をするのか、どこを目指すのかを明らかにしておかなければ、一貫した施策を取れなくなってしまうでしょう。
あるべき姿がはっきりしないと事業を進める中で行動にブレが生じてくるので、売上を伸ばす工夫も思いつきにくくなります。
フランチャイズへの加盟は事業のスタートに過ぎません。始めた先のビジョンも、準備の段階でしっかりと決めておきましょう。5年後、10年後の姿を明確にしておくことが大事です。
サポートとロイヤルティのバランスを考える
フランチャイズは業種はもちろん、本部企業によってサポートの質も支払うロイヤルティも変わってきます。
本部のサポートにばかり依存する体質ではいけませんが、何か問題が起こったときに助けがあるのは大きな安心材料です。どれだけのサポートが受けられるのかは、契約前にチェックしておきましょう。
高額なロイヤルティを払っているにもかかわらず、十分なサポートを受けられないという事態は避けたいところです。受けられるサポートとロイヤルティの額を見比べ、割の良い加盟先を選ぶと失敗が減ります。
決められたロイヤルティを払う価値があるかどうかは、サポートの他にブランド力やノウハウの質も考えて判断しましょう。
開業資金は余裕を持って準備する
フランチャイズだと開業当初からある程度の集客が期待できるため、運転資金をほとんど準備せずに開業してしまう事業主も少なくないようです。
しかし、フランチャイズで開業したいなら、開業資金は十分な余裕を持って用意する必要があります。加盟金だけでなく、スタート後の売上が少ない時期でもロイヤルティは発生するためです。
成功しているビジネスモデルを使えたとしても、オープン前に立てた売上予測の通りに事業が進むケースは珍しいでしょう。わずかな期間で運転資金が底をついてしまうケースもあるため、開業資金は多いに越したことはありません。
売上が思うように伸びなくても経費やロイヤルティを支払えるよう、最低でも売上目標の半年分は用意しておくと安心です。
成功しやすいとされる業種3選
フランチャイズは、業種によって収益性や成功のしやすさが変わってきます。数あるフランチャイズビジネスの中でも、特に成功しやすいとされる業種をチェックしておきましょう。
①コンビニや飲食店
コンビニや飲食店は、フランチャイズチェーンとして人気の業種です。特に、コンビニはフランチャイズとして非常に数が多く、日本全国で展開されています。本部から店舗運営について、多くのノウハウを学べるでしょう。
人材採用や教育・経営分析に至るまで、さまざまなサポートを受けながらお店を運営できます。初めて店舗運営を経験するコンビニオーナーも少なくありません。
特定のジャンルに特化した飲食店であれば、本店から実践的な経営ノウハウも学べます。その分野での経営について学べるため、1人でお店を持つ前段階としてもおすすめです。
コンビニも飲食店も、ブランド力が集客数に大きく関わります。自ら立ち上げるより、フランチャイズの方が成功しやすいジャンルといえるでしょう。
②ハウスクリーニング
個人の家に行って清掃を請け負うハウスクリーニングは、市場全体が成長傾向にあります。今後ニーズの拡大が予想されるため、フランチャイズ開業におすすめの業種です。
日本全国で単独世帯や共働きの家族が増えているため、家主に代わって家の清掃をしてくれる業者は、現在よりさらに広く受け入れられていくでしょう。
事実、近年は多くのハウスクリーニングのフランチャイザーが登場しており、多くの本部が事業を拡大している状況です。200万~300万円程度の開業資金で、フランチャイズ契約を結べる企業もあります。
また、在庫を持つ必要がなく、比較的低コストで始められる点もおすすめのポイントといえます。初めて事業をする人でも始めやすいでしょう。
③整体やマッサージ
整体やマッサージなどのフランチャイズも人気です。提供するサービスによってそれぞれ資格が必要になるものの、高齢化社会では今後も一定のニーズを見込めます。
フランチャイズ契約を結んで診療所を開くだけでなく、施設を持たない訪問型マッサージのフランチャイズに加盟するのも一つの方法です。物件や設備にかかる開業資金を抑えたいなら、訪問型も視野に入れましょう。
マッサージ自宅や小さな事務所を拠点として、開業することも可能です。マッサージや整体の資格を持っている・これから取得できるという人は、選ぶ業種の選択肢になるでしょう。
フランチャイズへ加盟する前の確認ポイント
フランチャイズの契約をよく確認しなかったために、後から本部企業とのトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。加盟を決める前に確認したい事項を押さえ、スムーズな開業への準備を進めましょう。
①契約終了後に同じ業種で営業できるか
フランチャイズ契約が終了した際に、『同じ業種で個人開業できるかどうか』は最初に確認しておきましょう。
フランチャイズで開業しても、経営ノウハウを学んだ後は自らの事業を興したいと考えている人は少なくありません。しかし、契約にあった『競業避止義務』のために、同業での起業を断念せざるを得なくなる可能性があります。
競業避止義務とは簡単に言うと、所属していた組織(フランチャイズではフランチャイザー)の不利益になる行為をしてはいけないという決まりです。
フランチャイズ契約で競業避止義務が課されていると、契約が終了した後に定められた期間は同じ業種で営業できません。
ノウハウを持ち出されてライバルが増えるのを避けるために、多くのフランチャイザーが加盟者へ競業避止義務を課すのです。
フランチャイズ契約を結ぶ際には、まず競業避止義務が課せられるかどうかを確認しましょう。義務がある場合には、期間や対象となる業務の範囲をチェックしておきます。
②契約書を理解するための情報
フランチャイズ契約を結ぶ際には、内容を確実に理解して不明点がないようにしておきましょう。契約書を読み込む際には疑問点や懸念点をメモして、本部企業の担当者によく確認します。
また、不利な契約を結ばないようにするためにも、契約書を読み解くための情報は事前にチェックしなければなりません。
中小企業庁や日本フランチャイズ協会(JFA)が発信している注意事項や、本部企業と加盟店とのトラブル事例を調べておきましょう。実際に起こったトラブルを知っておけば、事前に対策を立てられます。
しっかり勉強してフランチャイズ開業を
フランチャイズ開業では、全くのゼロから事業を始めるよりも効率的に集客や経営スキルの習得ができます。本部企業のブランド力や設備・ノウハウを活用でき、開業当初から売上を出しやすいのが魅力です。
しかし、向いている人も向いていない人もいるため、自分が本当にフランチャイズで成功できるのかを考えて加盟を判断しなければなりません。努力によっても儲けられるかどうかは変わってきます。
業種やフランチャイザーを選ぶところから、知識がなければ成功は見込めません。市場状況やフランチャイズ契約の確認ポイントも押さえ、勉強を重ねて開業に備えましょう。